ソニーの社員食堂の一部(Photo by (c) Sony PCL Inc.)
ソニーの社員食堂の一部(Photo by (c) Sony PCL Inc.)

「食堂利用者数が大幅に減少しているので、従来どおりのメニューを提供することは困難になっています。(社食の)運営会社に対して追加で補助金を支払うことによって必要最小限の選択肢を残しつつ、食堂の運営を維持しています。ベジタリアンメニューやヘルシーメニューの提供ができていない状況なので、ダイバーシティや健康への配慮が今後の課題の一つです」(広報担当者)。

 また、社食と言えば、健康機器メーカーのタニタも忘れてはならない。同社の社員食堂は、健康に配慮したレシピ本がベストセラーとなり、その取り組みが映画化されるなど(『体脂肪計タニタの社員食堂』)知名度も高い。

 タニタに現状を問い合わせたところ、現在、社員食堂は休業中だという。

「弊社の社員食堂については、新型コロナウイルス対策のため、昨年の4月の緊急事態宣言より断続的に休業をしており、今年は1月の緊急事態宣言から休業をしています。今後の再開は感染状況などを考慮し検討する予定です」(担当者)

 社食で有名なタニタでさえ休業状態を余儀なくされるほど、その運営は厳しい。企業に最も重くのしかかるのが「施設の維持費」だ。閑古鳥が鳴こうと、人件費をはじめとするランニングコストは常に発生する。前出の藤井氏はこう話す。

「食数が減った分、社食で働く従業員もコロナ前ほど必要ではなくなっています。実はコロナ直前までは、社食は働き手が足りず人手不足でした。人をどうやって確保するかが課題でしたが、今はむしろ足かせになってしまっている。大手企業ほど抱えている人数が多いので、大変だと思います。実際、特に都心部にある企業の社食を請け負う運営会社では、別の地域の社員食堂に配置転換させる動きが進んでいます」

 ただ、自社で社食を運営する「直営」の場合は、こうした対策も取れないという。

「委託会社の場合は余剰人員が出ても別のエリアに人を異動させることが可能ですが、直営では提供する食数が5000食から100食に減ったからといって、異動させることもできない。かといって、解雇などで簡単に人を減らすこともできないので大変です。もともと料理ができる人や食のプロを雇っているので、営業など別の部署に配置転換するのも現実的ではないでしょう」(同)

 課題は他にもある。大手社食運営会社に勤める40代男性は「食品ロスが一番の課題」と話す。提供する食数(喫食数)が減って食材が余れば、食材のロスにつながる。

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読み間違えれば100食単位でロスに…