AERA 2021年9月27日号より
AERA 2021年9月27日号より

 8勝と40号をマークした8月18日のタイガース戦は90球のうち、8割近い69球がストライク。「常識破り」のフォーム改造でさらにレベルアップしている。地元紙の記者は「大谷は打者としてもすごいが、投手に専念すれば20勝を挙げられるし、サイ・ヤング賞(最優秀投手賞)も取れるだろう」と分析する。

 走塁でも大記録が注目されている。8月31日のヤンキース戦でア・リーグ史上4人目の42本塁打と22盗塁を達成。その走塁が圧巻だった。五回2死一、三塁で、三塁走者の大谷は捕手が二塁へ送球した間に重盗を敢行。微妙なタイミングだったが、鮮やかな身のこなしでタッチをかわして本塁に生還した。

■マドン監督のおかげ

 盗塁を積み重ねる姿を意外に感じるファンは多いのではないか。日本ハムでは2016年の7盗塁、大リーグでも19年の12盗塁が自己最多だった。

「ジョー・マドン監督の功績が大きい。大谷がストレスを感じないように自由にやらせています。今年から導入した『DH(指名打者)解除』はその代表例。登板日も打席に立てるようにしたことで『早々と降板した場合に後続の投手が打席に入らなければいけない。打撃力が低下する』という声が上がりましたが、大谷の活躍でその懸念も吹き飛ばしました。登板前後の試合も野手で出場させ、走塁もできるだけ自由に走らせています。他の監督だったら故障のリスクを考えて自由に走らせないし、『DH解除』にも慎重だったでしょう」(前出の地元紙記者)

 大谷が最も怖いのはケガだ。8月28日のパドレス戦。初回の打席で内角高めの150キロ直球を打ちにいった際に右手首に直撃した(記録は空振り三振)。幸い大事に至らなかったが、相手も大谷を徹底マークし、厳しい内角攻めが予想される。故障を避けて10月初めまでのシーズンを最後まで駆け抜けることが、タイトルを獲得する上で大きなポイントになる。

 2桁勝利のほか、30盗塁、MVP、そして念願の本塁打王──。歴史的快挙をいくつ達成できるか楽しみだ。(ライター・牧忠則)

※数字は9月15日現在

AERA 2021年9月27日号より抜粋

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