数年来の情報系人気は来年も続きそうだ。理系から文理融合型となり、文系学生の志願が増加している。「大学入試」特集のAERA 2021年9月27日号から。
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情報系の人気を受けて、新たに学部を作る大学が増えている。22年度に近畿大学が情報学部を、岡山理科大学が総合情報学部を規模拡大して情報理工学部にする。河合塾・教育研究開発本部主席研究員の近藤治さんによると、学部や学びの内容も変わりつつあるという。
「従来はプログラミングや通信技術の研究など、理系分野が主流でしたが、最近は集めた情報をどのように社会に還元していくかなど、社会科に代表される文系に傾斜しています」
実際、文系学部でもデータ分析を通してビジネスや社会課題の解決に役立てようとする動きが顕著になってきている。23年度には一橋大学もソーシャル・データサイエンス学部を新設する見通しだ。
情報系学部の広がりの中でも注目は、女子大学初となる工学部を開設する奈良女子大学。
「人文系のデータサイエンス的な要素を加味した学部になるようです」(近藤さん)
副学長の才脇直樹教授は設立の背景を次のように語る。
「従来の工学部はハイスペックを追究するモノ中心のアプローチでした。世の中を変える原動力にはなりますが、誰もがすぐにその恩恵を受けられるわけではありません。一方、多彩な視点で技術を柔軟に使いこなせば、多くの人に役立つモノづくりができる。固定観念に縛られることなく人中心の技術を創造し、社会をより良くするイノベーションを起こせる多様な人材を育てていきます」
■起業論もあり実践的
新設される工学部は工学科のみの単科学部で、専門を設けずに幅広く学ぶ。学問領域として生体医工学・情報・人間環境・材料工学の4エリアに分かれるが、学生は全エリアから科目を履修し、自分でカリキュラムを組み立てる。
特徴ある授業として「起業論」が設定されている。起業のノウハウを身につけるとともに、女性起業家の講演やビジネスプランの作成など、実践的なプログラムが用意されている。
「これからは、映像や音楽技術の需要が伸びてくる」