読者層でみると、男性読者は50代が多い。一方、女性の読者層では特異なデータが出たという。
「弊社の本の購買層は、通常であれば年配の方が多いのですが、高市さんの本に関しては30~40代の女性が多く、10代~20代の若い女性も買われているのが特徴です。『10代~40代女性』の合計値が、人口の多い層の『50代以上』の女性の約2.5倍というデータも出ています。若い女性からは、『高市さんが総理になれば痛快だ』といった声も聞かれました」
同出版局長は「個人的な意見ですが」と前置きした上で、高市氏への思いも語る。
テレビや新聞では河野さんが優勢という報道も多いですが、読者からの感想や書店での売れ行きを見ていると、高市さんが勝つ可能性も十分あると感じています。本の売れ行きだけで見たら総裁確実です。100代目の総理が初の女性となれば、さらに盛り上がると思います。ぜひ総裁になってほしいですね」
河野氏と高市氏の著書で、ここまで差が開いたのはどうしてなのか。出版物の動態調査などを手がける出版科学研究所の担当者は次のように推測する。
「高市さんの著書は、総裁選の公示日の少し前の9月15日の発売というタイミングが良かったのかもしれません。また、河野さんはこれまでもメディアやSNSなど、自らが前面に出て発信してきましたが、高市さんはそれまでメディアに出る機会はあまりなく、新鮮味がある。どんなことを考えているのか知りたい方も多いのではないか」
出版業界に関する数々の著書があるフリーライターの永江朗氏は、別の視点からこう分析する。
「保守思想のネット民たちと親和性の高い本は固定ファンがいて、ある程度確実に売れる数が見込めます。そのジャンルの人の本や、あるいは似た匂いのする本は必ず買うという人が一定数います。これまでも百田尚樹氏の著書や、明治天皇の玄孫である竹田恒泰氏の著書などが売れてきました。今回の候補者の中で高市さんの本が突出しているのは、それだけ彼女の保守主義的な言動や唱える歴史観が、保守的思考のネット民のマインドと親和性が高いからでしょう。高市さんと思想の近い安倍さんの支持層を中心に購買につながっているのだと思います」
自民党総裁の座に就けば、著書はさらなる売り伸ばしのチャンスを得る。それぞれの出版社は総裁選の動向を、固唾(かたず)をのんで見守っている。