<ライブレポート>阿川泰子がジャズやポップス、ソウルミュージックの名曲を届けたBillboard Live YOKOHAMA公演
<ライブレポート>阿川泰子がジャズやポップス、ソウルミュージックの名曲を届けたBillboard Live YOKOHAMA公演

 ジャズシンガーの阿川泰子が9月23日、Billboard Live YOKOHAMAにて【阿川泰子 CROSSOVER NIGHT 2021】を開催。自身の代表曲をはじめ、ジャズやポップス、ソウルミュージックのスタンダードナンバーを披露した。
 
 阿川をサポートするのは、バンドマスターの笹路正徳(Key)をはじめバカボン鈴木(B)、今堀恒雄(G)、庵原良司(Sax, Flu)、そして鶴谷智生(D)という馴染みの顔ぶれ。青いドレスを身に纏った阿川がステージに現れると会場からは温かい拍手が沸き起こり、まずはアントニオ・カルロス・ジョビンの「Pardon My English」を披露した。この曲は阿川自身も1981年のアルバム『SUNGLOW』の中で取り上げた、軽やかなボサノヴァ・ナンバー。今堀のガットギターと笹時のエレピが弾むようなリズムを奏で、その上を庵原のフルートとアンニュイな阿川のボーカルが絡み合う。

 続くボズ・スキャッグスの代表曲「Hard Times」では一転してファンキーなリズムを繰り出すリズムセクションと、ジャジーでパワフルなボーカルに客席のボルテージはどんどん上がっていく。かと思えばフィービ・スノウによるカバーでも知られるスティーヴン・ビショップの珠玉のバラード「Never Letting Go」(邦題:薔薇の香り)では、笹路のグランドピアノと庵原のサックスが、しっとりと歌い上げる阿川のボーカルをロマンティックに盛り上げていく。シンプルでありながら、曲ごとにガラリと景色を変えていくアンサンブルに思わずため息が漏れた。

 「こんな状況の中、足を運んでくださった皆さんと、素敵な機会を与えてくれたBillboard Liveのスタッフに感謝いたします。音楽が『不要不急』と言われてしまい、少し悲しい気持ちでいたのですが、こうやって皆さんと素敵な音楽を共有できて幸せです。いつかこの日のことを思い出しながら『あの時は、こうだったよね』なんてみんなで話せる日が来ることを楽しみにしています」

 そう挨拶した後に演奏したのは「Up Where We Belong」。ジョー・コッカーとジェニファー・ウォーンズのデュエットによる、1892年公開の映画『愛と青春の旅立ち』の主題歌だ。「ジョー・コッカーさんが歌うオリジナル・バージョンは男っぽい歌が印象的でしたが、その後に発表された女性ボーカルによるカバーをいくつか参考にしながらアレンジしました」と阿川がコメントしたように、クラリネットのロマンティックな音色によるイントロの有名なフレーズや、少しハスキーな声で歌う阿川の包み込むようなボーカルが心のひだに染み渡る。「希望を持って進んでいけば、きっといいことがある」というこの曲の歌詞のテーマも、コロナ禍でまた新たな輝きを放っていた。

 その後もプラターズの「Smoke Gets In Your Eyes」(邦題:煙が目にしみる)をドリーミーなジャズアレンジで演奏したり、ジョン・コルトレーンの名演でも知られる、ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』(1989年)の挿入歌「My Favorite Things」(邦題:私のお気に入り)をスリリングなスウィングビートで繰り出したり、誰もが知る有名曲の数々にただただ酔いしれる。中でも中盤に演奏したダイアナ・ロスの「If We Hold On Together」(1988年)や、ホイットニー・ヒューストンの「Saving All My Love For You」(1985年)は当時、日本でもドラマ主題歌に起用されるなど大ヒットした洋楽で、聴いているうちに当時の記憶が次から次へと蘇ってきて思わずめまいが。普段、あまり過去を振り返ることは少ない方なのだが、たまにはこうして思いきりノスタルジーに浸ってみるのも悪くないものだと、それも「音楽」の持つ素敵な力の一つでもあることを、コロナ禍で改めて強く認識したのだった。

 「続いては、私の最大のヒット曲を3曲続けて聴いてください!」

 そうチャーミングに叫ぶと、「Sentimental Journey」「Take The “A” Train」「Skindo LE-LE」と畳み掛け、アンコールではディズニー映画『アラジン』挿入歌「A Whole New World」と、アイルランド民謡「Danny Boy」をしっとりと歌い上げ、この日の公演を終了した。

 なお、阿川は来たる11月3日、「カルッツかわさき」にて開催される【かわさきジャズ】にも、Shiho、May J.、由紀さおりたちとともに出演する予定。こちらも今から楽しみだ。

Text by 黒田隆憲
Photo by Hisanori Taguchi

◎公演情報
【阿川泰子 CROSSOVER NIGHT 2021】
2021年9月23日(木)
神奈川・Billboard Live YOKOHAMA

【魅惑のジャズ・ヴォーカル】
2021年11月3日(水・祝)
神奈川・カルッツかわさき
START 17:00
チケット:全席指定席 S席 6,000円 / A席 5,000円
チケット販売中:https://www.kawasakijazz.jp/ticket/
出演:阿川泰子、Shiho、May J.、由紀さおり、藤澤ノリマサ、牧野竜太郎(以上、Vo.)
佐山こうた(Pf.)、三好“3吉”功郎(Gt.)、井上陽介(Ba.)、大坂昌彦(Dr.)
公演情報:https://www.kawasakijazz.jp/program/detail2021/20211103.php

◎イベント情報
【かわさきジャズ2021】
2021年9月17日(金)~11月14日(日)
ミューザ川崎シンフォニーホール、カルッツかわさき、ラゾーナ川崎プラザソル、新百合トゥエンティワンホール、昭和音楽大学ユリホール、川崎市アートセンター、ほか川崎市内各所
公式HP:https://www.kawasakijazz.jp/