「バブルの時代から凋落し続けてきて、大多数の人間は、もう大きな夢は見られない。せめて大負けしないよう、地道にやっていこうという人生です。負けない戦いを続けていくしか生き延びる術がない。直家の生き方は参考になりますよね」


 朝9時から正午までの3時間に集中して執筆し、午後は2時間の散歩、買い物、昼寝など。車で三崎にマグロを食べに行くこともある。その間も頭の中では小説の次の展開を考えている。


「書いているときは、つらいと思うことがほとんどですね。いかに自分の感覚を、正確に文字に置き換えるか。特に歴史小説だと、それは難しい」


 史実があるから物語の展開が制限されるし、「正義」のような現代的な言葉は使えない。かつ自分の視点も入れるという縛りの中で、どれだけ独自の物語に仕上げられるか。そのつらさが見事に結実した大長編だ。(仲宇佐ゆり)

週刊朝日  2021年10月8日号

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