漫画家、ミュージシャンの久住昌之さん(撮影/写真部・張 溢文)
漫画家、ミュージシャンの久住昌之さん(撮影/写真部・張 溢文)

 イメージに合う店探しはかなりの難題だという。味がよさそうな店の情報はネットで検索すればいくらでも出てくるが、『孤独のグルメ』はそもそもおいしい店を紹介する番組ではない。『孤独』の世界観。

「店を探すスタッフも、ここはおいしいけど、『<孤独的>かな?』と常に考えているようです」

■「結論」とか「コツ」、みんな好きだけど…

 今の世の中、「一言で言うと」「結論は」「コツは」があふれている。わかりやすいものが好まれる。

「みんな、結論とかコツ、好きですよね。一言でまとめれば、わかった気持ちになるかもしれない。でも、一言で語れない魅力もあります。

 店探しも同じこと。続けているうちにスタッフの間で『これは<孤独>だ』という微妙な感覚が共有できるようになってきました。視聴者もきっと『いかにも<孤独>に出てきそうな店だな』と思って見ているはず。

 店が古ければいいわけでも、料理が旨ければいいわけでもない。東京には飲食店が無数にありますが、孤独的な味のある店は少なくなってきました」

 久住さんは小学生の頃から絵を描くのが大好きだった。

「でも、明らかに僕より絵の腕が上の旧友がいました。消しゴムも使わずにすらすら描いていく。なのに、デッサン力も構成力もレベルが違う。生まれ持っている画力が違うのだと感じました。ボクは何かアイデアがないと、彼とは絵で並べないと思いました」

 ならば、自分だけしか描けないものを描こうと思った。そうすれば、上手下手は関係なくなる。

「いつも上手下手のワナがあります。イイ絵は『ウマイヘタ』ではない、と頭ではわかってるんだけど、気がつくと下手なところを隠そうとしたり、技術にとらわれたりしてしまう。

 歌もそう。リズムや音程などの面でレベルの高い人はいくらでもいる。それで、じゃあ、自分の個性は何なのだろう……などと考えはじめると、もっと自分がわからなくなる。

 そのうち『本当の自分探し』なんて言い出す。そんなの、見つかるわけない(笑)。申し訳ないけど『暇なの?』って思っちゃう」

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