漫画家、ミュージシャンの久住昌之さん(撮影/写真部・張 溢文)
漫画家、ミュージシャンの久住昌之さん(撮影/写真部・張 溢文)
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 久住さん原作の漫画をドラマ化した『孤独のグルメ』は今年7月放送開始分でシリーズ9作目を数える。ロングヒットの背景は、「おもしろいもの」を追求する久住さんの創作スタイル抜きには語れない。アエラ増刊「AERA Money 2021秋号」では久住さんのインタビューを掲載している。

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『孤独のグルメ』は輸入雑貨商を営む井之頭五郎が主人公だ。営業に出向いた街で見つけた店にふらりと入って、「ひとり飯」を満喫する。

 漫画版は日本とヨーロッパで活躍した谷口ジローさん(2017年2月没)が作画を担当し、テレビ版では五郎役の人気俳優、松重豊さんが漫画版の世界観そのままに好演。五郎の気持ちいい食べっぷりと、絶妙な心理描写が視聴者の食欲をそそる。

 久住さんは『孤独のグルメ』の原作者にとどまらず、テレビ版もスタッフと一緒に作っている。井之頭五郎のセリフも7割は久住さんの手が入っているという。

2012年1月にはじまったシーズン1以来、オープニングを含むすべての劇中音楽を作り続けており、音楽でもそのシーズン全体のテーマを示す。

■表テーマはコロナ、裏テーマはロック

「今年放送されていたシーズン9は、やはりコロナ(新型コロナウイルス)がテーマです。世界中にコロナが広がり、飲食業も苦しんでいます。

 政府のやり方に矛盾を感じる人もいれば、怒っている人、不満な人もいる。そしてみんな不安を抱えている。そんな状況で作っていくドラマの中でコロナを『ないもの』にはできませんよね」

 もう一つのキーワードは、ロック。

「ベトナム戦争がはじまった(1955年)あと、1960年代後半から1970年代にかけて、世界的に反戦の機運が出てきて、政治や社会に対する反発も強まりました。そんな時代のロック的な要素を今回は取り入れました」

 久住さんには漫画家やミュージシャン以外の顔もある。切り絵の新作を毎月発表し、個展も開く。この取材をさせていただいた店(東京・吉祥寺「焼き鳥屋てら」)には久住さんの切り絵作品が多く飾られていた。

2019年には『大根はエライ』(福音館書店)で第24回日本絵本賞を受賞した。これは久住さんが子ども向け科学雑誌『たくさんのふしぎ』に掲載された2003年の作品。それから15年後の2018年に傑作集として再び世に出て、翌年に賞を取った。

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