さらに必要なのは、感染対策の転換だという。
「現在では空気感染が主な経路であり、唾液などを介した飛沫感染は少ないことがわかってきました。感染者の肺胞から出るエアロゾルは粒子が小さいため、咳や会話だけではなく通常の呼吸でも出てくる。しかも、長時間も空中を浮遊するので、閉鎖された室内であればどこでも感染リスクが変わりません。必要なのは換気の徹底で、何も飲食店だけを目の敵にする理由はない。ですから、経済的ダメージをもたらす不要な規制は撤廃するべきなのです」
ワクチンを打っていればブレークスルー感染しても多くの場合、重症化しないで済む。従って柔軟に対応を変える必要があると、上医師は説く。
外交での喫緊の課題は、激化する米中対立の間で日本がどう立ち回るかだ。
米国政治に詳しい上智大学の前嶋和弘教授は、バイデン米大統領との相性は良いと予測する。
「中国に対する立場が日米で似通っているうえ、ともに対話型の政治家で性格も合う。オバマ元大統領がバイデン氏を『いい兄貴』と慕ったように、ひと回り年下の岸田氏もいい弟として懐に入れるはず。バイデン氏は『来いよ』と手を広げている状態なので、日米関係が安倍トランプ以上の蜜月になる可能性はある」
だが、日米が「蜜月」でも安心ではない。岸田氏は「経済重視、軽武装」の伝統を持つ宏池会出身だが、総裁選では「日本は米中対立の最前線にいる」と発言するなど対中強硬姿勢を鮮明にした。日、米、豪、印の4カ国からなる「クアッド」が中国包囲網を敷く中では現状維持ともとれるが、前嶋氏は「米国は中国に対し対決姿勢一辺倒ではない」と言う。
「米国にとって中国は、安全保障や覇権争いでは敵でも、経済的には依存して友人として付き合いたいフレネミー。今月末のG20の時期にバイデン氏が習近平国家主席との首脳会談を画策しているように、米国は中国と対話を継続したがっている。たとえば農産物の輸出入は仲良くやるなど、細分化して関係を戻していくでしょう。岸田首相はこうした動きをよく見極めることが大事です」