その岸田氏の政権が発足。総裁選で影響力を増した安倍氏にどう向き合うのか。「ひ弱さと強情」がどう表れるのか注目した。
すると、安倍氏の盟友・麻生太郎氏は副総裁として自民党を牛耳る。幹事長には安倍氏に近い甘利明氏(麻生派)、政調会長には安倍氏が全面支援した高市早苗氏(無派閥)が起用された。官房長官は安倍氏の出身派閥・細田派の松野博一氏。岸田氏は森友問題の再調査に否定的で、桜を見る会をめぐる安倍氏の責任問題も追及しないという。これでは、岸田氏が掲げた「新しい自民党の姿」とはほど遠い。「安倍傀儡(かいらい)政権」という野党の批判が説得力を持つ。
「特技は聞く力」という岸田氏。誰の声を聞くのか。新型コロナウイルスの感染拡大が続いて、国民は疲弊している。多くの国民は安倍・菅義偉政権のコロナ対策に不満を抱きながらも、耐え忍んできた。「森友・桜」といった腐敗体質への怒りもマグマのようにたまっている。国民の声に耳を傾けず、安倍支配に屈するなら、岸田政権は短命に終わるだろう。国民が審判を下す総選挙が1カ月後に迫る。
※AERA 2021年10月11日号