市川市立塩浜学園の小学5年生のクラスで行われた「勇者の旅」の授業の様子(千葉大学子どものこころの発達教育研究センター提供)
市川市立塩浜学園の小学5年生のクラスで行われた「勇者の旅」の授業の様子(千葉大学子どものこころの発達教育研究センター提供)
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 日々の暮らしの中でおとなだけでなく子どもたちもさまざまな不安を感じている。そんな不安と上手につきあっていけるように、うつ病や不安症などの治療に使われる「認知行動療法」を小・中学校の教育現場に導入する取り組みが広がっている。その名も「勇者の旅」。千葉大学子どものこころの発達教育研究センター特任講師の浦尾悠子さんらが考案したプログラムで、2015年から学校への導入が始まり、現在までに100校以上が取り入れている。

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「不安」は誰もが日常的に抱える感情の一つだ。不安があるからこそ危険から身を守ることができるし、不安を克服しようと勉強を頑張るなどモチベーションを高めることにもつながっていく。しかし不安が強すぎると、いつも通りの生活が送れなくなり、心の病気に発展してしまうことがある。精神科の看護師や公認心理師として子どもたちの心の健康に向きあってきた、千葉大学子どものこころの発達教育研究センター特任講師の浦尾悠子さんは「不安を抱えやすい子どもは実はとても多い」と話す。

 浦尾さんらが小学校高学年と中学生を対象に行った研究では、不安の大きさを測る尺度で「不安が強い」とされた児童・生徒は約10%。30人学級で3人がハイリスク群ということになる。浦尾さんはこう続ける。

「不安の問題は、学校不適応や不登校、いじめ、自殺などに密接に関わっていると考えられています。文部科学省の2015年度『児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査』でも、不登校となったきっかけの本人に係る要因のうち『不安の傾向がある』がトップで、30.6%を占めていました」

■日本の教育現場に合ったものを作成

 不安を感じたとしても対処する具体的な方法を知っていれば、自分で不安を小さくすることができ、心の病気に発展する事態を避けられる可能性がある。浦尾さんらが考案した「勇者の旅」は、こうした不安への対処スキルを小学校高学年・中学生の子どもたちが学校で学ぶためのプログラムだ。浦尾さんは言う。

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認知行動療法がベースに