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 品川駅のメッセージ広告で、通勤時の人々に「今日の仕事は、楽しみですか。」と表示されたことが炎上し、話題になりました。コンコースを歩く通勤途中の人々の上部に、複数のパネルで無機質に「今日の仕事は、楽しみですか」と表示されたことが、まるで問い詰めているように感じられるという内容のツイートが拡散され、広告の掲載は1日で終了することになりました。今回の一件で、情報の発信手も受け手も意識すべきことが顕在化しました。問題点は大きく3つあると感じています。

 今回のケースでは、発信者に悪意があったわけではありません。ツイートされた画像は、広告の一瞬を切り取っただけの画像で、実際の映像を見ると、言葉はすぐにスクロールして消え、本来企業が伝えたかった「仕事を楽しくするサポートをしたい」というメッセージが流れていました。この一件は、発信者にとって不本意な形で拡散されてしまったケースといえます。実際の情報をいち早く伝えていたら、メッセージの趣旨も伝わっていたかもしれません。発信側は、炎上した場合に正しい情報を拡散することが大切ですし、受け手側は、その情報を正確に把握して反応すべきだと思います。

 SNSではインパクトがある情報がバズりやすい傾向にあります。一瞬や一コマを切り取って過度に誇張した情報である可能性も十分にあることを念頭に、「すぐに手に入れた情報にすぐに反応しない」姿勢が大切だと思います。SNSではより気軽に、誰でも情報を発信できるため、間違った情報が拡散されることも少なくありません。情報の伝わり方について把握しておくことと、他の意見を持つ側の情報も集める姿勢を身につけないと、ある種のネットいじめに加担することになります。

 次に、受け手側がどう思うか、何を感じるかに合わせてコンテンツを作る姿勢は、どの媒体においても重要です。今回のキャッチコピーは「今日の仕事は、楽しみですか。」という問いかけでした。おそらく大多数の人が「楽しみではないです」「仕事、楽しくないです」と答えるでしょう。私もそうです。仕事を楽しめる人は本当にごく一部です。猛烈に働き、仕事が楽しくて仕方がない、仕事が趣味だ、という方々を何人か知っていますが、彼らは自分で事業を拡大させるのが大好きで、経営やコンサルタントとして驚くほどの激務をこなしています。しかしながら彼らは、通勤時間帯に品川駅を通らない人々です。

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