◆ヤマトが貫く相手を認める愛

本作でも森雪(右)とスターシャは活躍(c)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト2205製作委員会
本作でも森雪(右)とスターシャは活躍(c)西崎義展/宇宙戦艦ヤマト2205製作委員会

 もちろん不思議に感じる部分もある。

「宇宙空間のはずなのに、どうしてこういう戦い方をしているんだろうとか、地球の運命をかけた艦になぜ日本人しか乗っていないんだろうとか、素朴な疑問はありました。だからといって、単純に多国籍にすればいいかというと、それはヤマトらしさがなくなってしまう。それらを、教えていただいた肝の部分と合わせて噛み砕いていきながら、ヤマトの範疇(はんちゅう)の中でちょっとだけずらしてみるなど意識してムードを変えていこうと思う部分はありました」

 最新技術のCGを駆使して描かれるビジュアル面にも「肝」はある。

「もともとのヤマトに、何を付け足すべきか、何を付け足してはいけないのか。CGだからといってディテールを細かくしすぎると、ヤマトらしさが失われることもある。これまでのリメイクシリーズの雰囲気も残しつつ、質感など、新たな雰囲気も出すことはできたかなと思います」

「2205」で乗艦する新クルーについて、安田さんはこう言う。

「土門竜介をはじめとした、新キャラクターたちの成長物語という側面を持ちますが、それが思い悩む古代への刺激にもなっていきます。かつての仲間たちや(森)雪はわかってくれるという安心感を持ちつつ、背中を押してもらいたいという思いも古代にはある。若い世代がぶつかってくることで、古代が自分を見つめ直して背中を押され、新キャラクターたちと一緒に成長していく。悩み続ける古代が、かっこいい古代に戻っていく、そんな過程を描いていけたらいいですね」

 ヤマトシリーズには、「愛」というメッセージを感じることがある。ヤマトシリーズに深い造詣がある明治大学大学院特任教授でアニメ・特撮研究家の氷川竜介さん(63)は、

「相手を認めるという意味での『愛』ですね」

 と語る。

「今の時代だからこそ、いっそう考える価値はあると思います。さまざまな違和感を肯定的に取り込みながら、認めて進んでいこう。そういったかたちでの『愛』が、21世紀のヤマトに貫かれているという気がしています」

 福井さんは、「2205」で描かれるヤマトに込めた思いをこのように語った。

「1作目のヤマトが発進した時代には、人類はもっと宇宙に進出し、発展した未来と良い生活が待っていると疑いなく感じていたと思うのですが、それらは残らず裏切られた現代。そうした状況に真正面から向き合い、まさに『新たなる旅立ち』となる作品にしたつもりです。また、原作を知らない世代には、渋くて見づらい作品のように映るかもしれませんが、だまされたと思って見てください。きっとあなたたちが今一番必要としているものが、ここにあります」

 ヤマトの新たなる雄姿、全世代が目撃するべきだ。(本誌・太田サトル、菊地武顕)

週刊朝日  2021年10月15日号より抜粋

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