◆肝を押さえつつ現代的に見せる
シリーズ構成を担うことの意義については、
「ヤマトこそ、新たなるアニメーションを牽引していく嚆矢だという思いがもともとありました。ヤマトシリーズが本来目指したであろう大河路線を、テーマ性を引き継ぎつつきちんとやっていくということ。あとは、新たに登場する敵や新キャラクターを絡ませてとやっていくと、おのずと物語の形は定まっていき、勝手に化学反応が起こっていくので、あとはそれを淡々と撮っていけばいい、そういう感覚です。『2202』に比べると、苦労よりも楽しさのほうが大きくて、自分自身、この世界、このキャラクターたちがどうなっていくんだろうという興味を持ちながら書くことができました」
今回新たに監督をつとめたのは、原作のヤマトシリーズを実体験として知らない、安田賢司さん(49)だった。福井さんは言う。
「思い入れが強いと、俺だったらこうするとか、“俺のヤマト”を演出してしまうことがある。経験上、そうなると肝心の物語がおろそかになることがあります。安田監督には、ヤマトということにこだわらなくていいということを、最初にお話ししました。シナリオが求めている物語を自然体で作ってほしいと」
「マクロスΔ」などを手掛けた安田さんは、福井さんよりも4歳下となる。
「3歳上の兄がヤマトが大好きで、本などがあってパラパラ見ていましたし、一般教養的にもちろん知っていますが、これまでのリメイクシリーズが、旧シリーズを本当に大好きだった人たちで作られてきたものだったので、お話をいただいてまずは驚きました」
と言い、こう続けた。
「新鮮な気持ちで今の時代のヤマトを作ってもらいたいと。あらためて見てみると、さすがに時代を感じる描写もある。それらをいかに今時にしていくか。そこを考えたとき、映像表現やテンポ感なのかなと思い、自分が近年作ってきた作品も、ボリュームがあるものをテンポよく見せていくところもありましたので、それを生かせるかなというところはありました」
とはいえ、ヤマトは45年以上続く一大シリーズでもある。
「当然、世代じゃないから好き勝手にやってもいいわけではありません。みなさんの記憶に残っている印象的なキャラクターのセリフ、かかる音楽、守らないといけない肝の部分、押さえどころを外さずに、世代ドンピシャの方も楽しめる作品を作らないといけない。そこは、福井さん、共同脚本の岡秀樹さんをはじめ、世代ど真ん中の方がたくさんいらっしゃいますので、意図を細かく確認し、現代的な見せ方と、自分の中で消化させながら、作っていきました」