占い師、作家 しいたけ.
占い師、作家 しいたけ.
この記事の写真をすべて見る

 AERAの連載「午後3時のしいたけ.相談室」では、話題の占い師であり作家のしいたけ.さんが読者からの相談に回答。しいたけ.さんの独特な語り口でアドバイスをお届けします。 

*  *  *

Q:年明けに移住を予定しています。館山に家を買い、そちらメインで生活し、都内の拠点はこれまでより小さな部屋に借り換えて仕事用とします。新しい生活に切り替える際のアドバイスなどありますか?親の介護もそろそろ始まりそうで、奔放にできるわけでもなく、でもまだ老後なわけでもなく、働かないと将来は不安。でも何か新しいこともやってみたい、難しいお年頃です。(女性/フリーランス/もうすぐ50歳/かに座)

A:まず最初に出てきた感想は、「うわぁ、いいですね」です(笑)。僕自身も空想でよく2拠点生活を考えることが多いし、それを実際行動に移している先輩としてすごく魅力的に映ります。

 こういうのってやっぱり「思い立ったが吉日」だと思うんです。衝動や欲望は、自分の人生を違う形に切り開いてくれる、大事なシグナルです。「こういうことやってみたいな」とか、「朝起きたら違う環境だったらどんなに素敵だろう」みたいに思うことがあっても、多くの人は日々の忙しさや、やらなければいけないことがあるから、その衝動をなかったことにしてしまう。そうではなく、少しずつ試していくことも大事だと思います。

 田舎暮らしをしたいと思ったら、初めはその土地のホテルに泊まったり、ウィークリーマンションを借りたり。そういう形で試していくと、どんどん違う価値観が出てきて、何か自分にとってプラスになるものが出てくると思う。だからとにかく、動き出したあなたに「おめでとうございます」とお伝えしたいです。

 この方だけではなく今、すべての人が今後生きていく環境について考える、一つの大きな転機にいると思います。

 環境が変わった時に、お勧めしたいことがあります。それは「データを取る」こと。1人会議をして、プラスの面もマイナスの面も書き出して、記録していくことです。

 自分にとって不慣れな環境で、不安を和らげてくれるものは、データだと僕は考えています。自分で毎日つけたデータ。例えば近くに市場があって買い物が楽しかったとか、都会より空がきれいだとか。仕事の比重を変えた時に、収入がいくら減ったとか、マイナス面についても全部細かくメモしましょう。

 そのデータがあれば、例えば親の介護をしなければいけないというときも、「比重」を自分で決定していくことができます。比重を考えずに「0か100か」で生きている人は、悩みが多いように見えます。100%で徹底的にやる代わりに、自己犠牲も自分に強いてしまう人が、思いのほか多いです。

 かに座は親との結びつきが強い人たちです。特に介護などはどの程度のバランスだったら苦しくなりすぎずにできるのか、気持ちが落ち込みすぎずにできるのか、その比重が本当に大事な気がします。

 大事なのは「0か100か」にしないこと。「できるとしたら、ここまで」という貴重なデータを、今集めてる最中なのかもしれませんよ。

◎しいたけ./占い師、作家。早稲田大学大学院政治学研究科修了。哲学を研究しながら、占いを学問として勉強。「VOGUE GIRL」での連載「WEEKLY! しいたけ占い」でも人気

AERA 2022年11月21日号