北朝鮮の大陸間弾道ミサイル「火星17」(朝鮮通信)

 だが今回、金正恩氏は「わが国に対する侵略的、挑発的な合同戦争演習だ」と非難し、過去に例を見ない頻度でミサイル発射実験を続けているのである。コリア・レポート編集長の辺真一(ビョンジンイル)氏がこう指摘する。

「17年当時とは明らかに違って、北朝鮮がものすごく強気です。9月に米軍が日本海に原子力空母を展開した時もそうでしたが、米韓合同軍事演習期間中にミサイル発射実験を行ったのは前例がない。この5年間で弾道ミサイルの精度を上げ、戦術誘導ミサイルなどを開発したことで自信を深めているのでしょう。本当に戦争直前、一触即発の危機にあると思います」

11月3日、北朝鮮によるミサイル発射情報を受けてJアラートを報じるNHKの放送

 11月3日、北朝鮮は弾道ミサイル6発を日本海に向けて発射したが、韓国軍はこのうち1発が最新型ICBM(大陸間弾道ミサイル)の「火星(ファソン)17」と推定。マッハ15の速度で約760キロ飛行し、最高高度は1920キロだった。だが、3段式の火星17は1段目と2段目の推進体の分離には成功したものの、その後の弾頭部が正常飛行できずに墜落、発射実験は失敗に終わったと分析した。

 一方、北朝鮮側は火星17には言及せず、その代わり「敵の作戦指揮システムを麻痺させる特殊機能弾頭部の検証のために弾道ミサイルの試射を行った」として、写真とともに発表した。

 辺氏はこう見る。

「写真を見る限り、北朝鮮が17年11月29日に発射に成功したというICBM『火星15』に極めて近い。北朝鮮が明らかにした『敵の作戦指揮システムを麻痺させる』兵器とは、EMP(電磁パルス)弾を指すと考えられる。ICBMを使った、EMP弾の上空爆発実験だった可能性があります」

 EMP弾は特定の高度で核爆発を起こし、強力な電磁波を発生させて電気・電子機器を損壊する。兵器や軍事機能を麻痺させるばかりか、広範囲にわたって大規模停電を起こす。従って、最新鋭の戦闘機も無力化される。

■米国の対朝政策 核保有を黙認か

 7回目の核実験もいつ行われても不思議ではない。北朝鮮は昨年1月の朝鮮労働党大会で「兵器システム開発5カ年計画」を示し、核ミサイル開発の強化とともに、軍事偵察衛星を用いた情報収集能力の確保を目指すとした。辺氏が解説する。

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