天羽健介さん
天羽健介さん

 つまりNFTによって、メタバースはいわば「もう一つの現実世界」になっていくのです。これが実現したら、やはり「革命」と呼ぶべき大転換になるでしょう。それがいま、まさに起こりつつあります。初めに「世界を変える可能性の塊」と断言したのは、こうした意味でした。どうですか、ワクワクしませんか?

■暗号資産はなくなってもNFTはなくならない

 中国人民銀行(中央銀行)が21年9月、外国企業によるサービス提供も含め、暗号資産の関連事業の全面的禁止を発表しました。とりわけ中央集権性が強い国家ですから、中央集権的な「信用」を必要としない分散型テクノロジーの暗号資産とは、一見相性が悪いように見えるかもしれません。ただ今回の禁止は、暗号資産を上手く使ったキャピタルフライト(資本逃避)やマネーロンダリング(資金洗浄)、賭博を防ぐための措置と言われています。

 一方で、中国はブロックチェーンを大いに活用していて、国策としてIDの管理や税金の徴収などを進めています。中央集権の国がオープンで民主的な技術を使うというのは皮肉な話ですが、ブロックチェーンの特長であるトレーサビリティ(追跡可能性)と改ざん不可能性という二つの機能を積極的に利用しているわけです。

 どんなテクノロジーでも、どの特長を活用するかは目的しだいで変わります。NFTでも権利関係では改ざんできないという機能が重視されるし、暗号資産の海外送金では価値そのものを低コストで簡単に移転できるという機能が重視されます。

 また中国は22年、法定通貨として「デジタル人民元」を発行すると言われています。今回の暗号資産禁止は、それに備えた措置との指摘もあります。日本や他の先進国でもデジタル法定通貨を検討している状況です。

 各国の中央銀行がデジタルの法定通貨を発行するにあたって、これだけ普及している民間の暗号資産を中国のようにいきなり禁止するとは思えません。ただ、両者が将来的に共存できるかどうかはまだまだ不透明です。たとえば海外送金のコスト面での優劣がなくなったら、自然と暗号資産の流通量が減っていき、特に通貨としての役割はなくなってしまう可能性はゼロではありません。

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これから本格化するトークンエコノミーの主役は、やはりNFT