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 つまりNFTは、あらゆるデジタルデータに現実のモノと同様の「価値」を持たせることができるツールというわけです。その登場によって、これまでネット上では不可能だった「1点モノ」あるいは文字通りの「限定商品」を流通させることができるようになりました。実際、アートやトレーディングカードのほか、ゲームや音楽、ファッションなど既存のコンテンツビジネスで広く活用され始めています。

 たとえば、世界中でNFTゲームが人気を集めていて、フィリピンではゲームをして生活費を稼ぐプレイヤー、プレイヤーに高額なアイテムをレンタルして稼ぐ投資家、その取引所といったビジネスモデルまで出てきています。

 NFTの真価は、メタバース(仮想空間)を劇的に発展させるツールである、という点にこそあります。ゲーム空間も含め、いまメタバースは「コミュニケーション空間」としての広がりを見せ始めています。

 代表的なのはFacebookでしょう。会長兼CEOのマーク・ザッカーバーグ氏はメタバースを「次世代のSNS」と最重要視しています。21年9月にCTO(最高技術責任者)がAR/VR(仮想現実/拡張現実)担当副社長のアンドリュー・ボズワース氏が就任したり、10月に既存のメタバースプラットフォーム「Facebook Horizon」の名称を「Horizon Worlds」に改称したりしたことからも、その本気度がうかがえます。

 ここ数年内にメタバースのコミュニケーション空間が確実に普及するでしょうが、そこで使われるアバターや土地、建物、道具、ファッションなどを「資産」として所有・管理・運用できる核心的ツールこそNFTなのです。つまりNFT化することによって、現実世界と同じように価値交換、たとえばアバターの服を売買するといった「トークンエコノミー」が可能になるわけです。

 これは、メタバースが現実世界と同じような生活の場、経済活動の場になり得ることを意味します。コロナ禍で、オフィスを閉鎖してリモートワークにシフトしたり店舗を閉鎖してeコマースに特化したりという動きが出てきました。でも結局は、現実世界の中でしかそうした経済活動は完結しません。メタバースでは、NFTを使うことでメタバースの中だけで、製造・流通・決済とすべて完結することができます。

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暗号資産はなくなってもNFTはなくならない