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■鉄道延伸で影響広がる
JR各線も地震で一時運行がストップした。東海道新幹線や山手線など各線で運転を見合わせ、冒頭の男性のように、多くの帰宅困難者が出た。
混乱は地震から一夜明けた8日朝も続き、京浜東北線の蕨駅や川口駅などでは混雑のため入場規制が実施された。指摘されたのが、「延伸」の影響だ。
特に影響が大きかったのは首都圏を南北に走る湘南新宿ラインだ。東海道・横須賀線から新宿を経由し、宇都宮・高崎線と相互直通運転する。01年に開通し、営業距離は約200キロにも及ぶ。各線が乗り換えなしでつながって利便性は格段にアップしたが、どこか1カ所に支障が出ると、全区間で運転がストップする。今回、運転を見合わせたことで、利用客が並走する京浜東北線などに流れ込み、混雑を招いたと指摘される。
先の松本さんは、湘南新宿ラインの整備で、都心部にあった車両基地の機能を郊外に移し、新たに用地を生み出すということもできたという。総合的な観点からも、延伸施策は否定するものではないと指摘する。
「ただ直通運転しかできないというスタイルではなく、今回の地震のような非常時への対策として、区間運転できる施設を保持し、すぐに活用できるようにしておくことが重要だ」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2021年10月25日号より抜粋
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