■リスクある商品 買う側に不可欠
背景には、「貯蓄から投資へ」を推進してきた金融庁がNISA制度の普及に力を入れていることがある。この年末に発表が予定されている「資産所得倍増プラン」では、NISAの「恒久化」と抜本的拡充を盛り込むことを狙っている。となると、個々人が今まで以上に株式や投資信託などのリスク商品と向き合う機会が増えるため、金融商品を買う側には金融リテラシーの向上が欠かせないとみているわけだ。
金融庁の狙いはともかく、資産をリスクにさらす側としては、どういう金融リテラシーを身に付ける必要があるのかは気になるところだ。リスク商品に向き合うのはNISAに限らない。50代以上は、それなりに積み上げた資産を保有する人が多いから、なおさらだろう。このさい「50代からの大人の金融リテラシー」について考えてみよう。
先に「お金の知識・判断力を意味する」としたが、もう少し詳しく言うと、金融リテラシーは金融に関する知識や情報を正しく読み解き、それをもとに主体的に判断できる能力のことを指す。年々金融商品は多様化、複雑化しており、それにつれて重要性を増している。
具体的な中身については、公式のものとして金融庁が2013年に発表した「最低限身に付けるべき金融リテラシー」(*1)があり、4分野15項目にわたって学ぶべき生活スキルが挙げられている。4分野とは「家計管理」「生活設計」「金融知識及び金融経済事情の理解と適切な金融商品の利用選択」「外部の知見の適切な活用」だ。また、日銀が事務局を務める金融広報中央委員会(以下、金広委)は、「最低限~」を年齢別に体系的かつ具体的に記した「金融リテラシー・マップ」(*2)を作っている。
一般的に日本人、とりわけ中高年の金融リテラシーは低いとみられてきたが、意外なことに金広委が現状把握のために3年おきに実施している「金融リテラシー調査」では違った結果が出ている。金融知識を問う正誤問題の正答率を見ると、年齢層が高いほど点数が高くなるのだ。つまり、50代以上は40代以下より金融知識が豊富となる。