「何か助けることはないかなって、みんな見てるんですよね。弱者への眼差しを感じます。私も優しく対応されることが多いので、自然に何か助けられないかと思うようになりました」
英王室とチャリティーの関係を取り上げた章は、長年、王室関連の取材を続けてきた多賀さんならでは。
「王室の基金に集まった寄付金はウィリアム王子、キャサリン妃らがパトロンになっている団体に分配されます。彼らがチャリティーの実績をアピールすることで、また寄付金が集まる。そういう循環を作ることも王室の役割です」

孤独を社会問題としてとらえ、孤独担当大臣を置いたイギリスの孤独対策を紹介する。NPOや企業の活動事例、英王室がチャリティー活動に果たす役割、恵まれた者による社会貢献、ロンドンの街に見られる配慮、がん患者への支援など、孤独を切り口にイギリス社会の奥深さを知ることができる(撮影/写真部・張溢文)
この本は多賀さん自身の深い孤独の中から生まれた。執筆中の昨年10月、夫の康紀さんが亡くなったからだ。「泣きたい時は思い切り泣きなさい」「時間が薬になるからね」といった周りの人たちの言葉に助けられた。
「どうやって日常に戻ればいいのかわからなくて、言葉にすがるような気持ちでした。結局、孤独が怖くて人とのつながりを探していたんですね」
人を孤独にしてはいけないという思いは一層強くなった。
「日本には人に頼ってはいけない、迷惑をかけてはいけないという美学がありますが、孤独だから助けてと声に出せる世の中のほうが優しいですよね。孤独を賛美しすぎず、イギリスみたいな国もあることを知っていただければと思います」
(ライター・仲宇佐ゆり)
※AERA 2021年10月25日号