史上最年少三冠を果たしたばかりの藤井聡太が、竜王戦七番勝負で豊島将之竜王に先勝した。名人戦と並ぶ将棋界最高峰のタイトル戦。「藤井時代」の到来を予感させる逆転勝ちだった。AERA 2021年10月25日号で紹介する。
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>>前編「藤井聡太三冠が豊島将之竜王に挑戦 史上最年少四冠に向けまず1勝」より続く
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ずっと藤井を圧倒してきた王者の豊島に、史上最年少四冠をもかけて藤井が挑む。これで盛り上がらない道理はない。
豊島は実力、人気を兼ね備えた名棋士だ。昨年の竜王戦ではタイトル通算100期の期待がかかる羽生の挑戦を4勝1敗で退けた。この1年でも豊島は羽生を圧倒。「将棋史上最強」と呼ばれる羽生に7連勝した棋士は豊島の他にいない。
今年始まった「SUNTORY将棋オールスター東西対抗戦2021」のファン投票では、豊島は西日本地区の2位に選ばれた。ただし1位は藤井。今期竜王戦は豊島にとってアウェーの雰囲気での戦いかもしれない。
■先手番がわずかに有利
タイトル戦の番勝負では、対局者は交互に先手番を持つ。第1局開始に先立ちおこなわれる「振り駒」で、まず先手を得たのは藤井だった。テニスではサーブをする側が有利なように、将棋は先手番がわずかに有利である。特にトップクラス同士の対戦では、その利が大きく影響する。近年はタイトル戦での先手番勝利を「キープ」と表現するようにもなった。叡王戦五番勝負では5局とも、先手を持った側が勝っている。
藤井は今年度公式戦、先手番で敗れたのは王位戦七番勝負第1局のみ。そのときは後手番を持った豊島が完勝で「ブレーク」を果たした格好だ。
本局、後手の豊島はリードを奪う。局後、藤井は「自信がない展開になってしまった」などとしきりに反省の言葉を述べた。
豊島のブレークで、久々に藤井が先手番で負けるのではないか。観戦者の多くはそう感じた。しかし藤井はよく辛抱し、崩れることなく持ちこたえる。
「対局中にそれまでのミスを悔いても仕方がないので、現状の局面で最善のがんばりができればと思っていました」