紀平梨花(きひら・りか)/昨季の全日本選手権で4回転サルコーを決め2連覇。2018年のGPファイナル優勝。今季はけがでGPシリーズカナダ大会欠場を発表 (c)朝日新聞社
紀平梨花(きひら・りか)/昨季の全日本選手権で4回転サルコーを決め2連覇。2018年のGPファイナル優勝。今季はけがでGPシリーズカナダ大会欠場を発表 (c)朝日新聞社

 一方で、ロシアの女子は異次元のジャンプ競争を展開している。15歳のカミラ・ワリエワは、トリプルアクセルと2種類の4回転を持つ。フィンランディア杯では249.24点で世界最高点を更新し、五輪金メダルの最有力候補となった。昨季の世界女王アンナ・シェルバコワ(17)と、3位のアレクサンドラ・トルソワ(17)はともに複数の4回転を操る。また世界選手権銀メダルの24歳、エリザベータ・トゥクタミシェワは8年越しの五輪出場を狙い、19年GPファイナル女王のアリョーナ・コストルナヤ(18)もトリプルアクセルは復活傾向だ。

 ロシア女子の一角を日本女子が崩せるか。トリプルアクセルは最低限必要になるだろう。

 また今回の北京五輪は、日本として初めて団体メダルの可能性が浮上している。まず三浦璃来(19)、木原龍一(29)組は、初めて組んだ瞬間から技の相性が良かったというペア。昨季の世界選手権は10位だったが、今季9月の国際大会では目標の200点超えを果たして優勝。

「世界と戦う自信がついて、夢が現実的に見えてきた」(木原)

■高橋大輔のソーラン節

 さらにアイスダンスは、2組が切磋琢磨している。小松原美里(29)、ティム・コレト(30)組は、コレトが日本国籍を取得したことで五輪出場が可能になった。また昨季からアイスダンスに転向した高橋大輔(35)は、平昌五輪経験者の村元哉中(28)と組み、表現の幅をさらに広げている。今季のリズムダンスに高橋自身が「唯一無二のプログラム」と称する「ソーラン節」のアレンジ曲を選び、米国での大会では高い評価を得た。

 日本は、ソチ五輪も平昌五輪も団体戦は5位だったが、ペアとアイスダンスが強化され、メダルにぐっと近づいている。

 コロナ禍のなか、多くの制限をむしろ力に変えた選手たちは、力強く成長してきた。誰もが「やり切った」と言えるシーズンになることを願いたい。(ライター・野口美恵)

AERA 2021年11月1日号より抜粋