9月に東京都台東区の今戸神社で行われた、映画「老後の資金がありません!」のヒット祈願イベント。写真向かって毒蝮さんの右が姑役の草笛光子さん、さらに右が、主人公の天海祐希さん(撮影/写真部・張 溢文)

 そんなふうに言われて、なるほどって思いましたね。オレの親父は、他人の意見なんかに全く聞く耳を持たない頑迷な人でした。だから、年寄りになると誰でも親父みたいになるもんだと思っていました。

 でも、日野原さんはいつもニコニコ笑って、オレの話はもちろん、もっと若者の話にだってきちんと耳を傾けるんです。2017年に105歳で亡くなるまで、いろいろなことにずっと好奇心旺盛で、ほんとにチャーミングな人でした。オレもこんなふうに年を取らなきゃいけないと思いましたね。

 昔は、ジイさんバアさんと孫がひとつ屋根の下に暮らしてたけど、今は核家族化で若者とお年寄りの接点があまりないじゃないですか。前にスーパーマーケットの店長に聞いた話ですが、バイトで雇った学生で、目端が利いて、接客のうまいのは、たいていお年寄りが家庭にいるんだそうです。それだけ、お年寄りは若者にいい影響を与えているんだと思うね。

「おばあちゃんの原宿」で知られる巣鴨のとげぬき地蔵通り商店街(東京都豊島区)に、最近若者が増えたそうです。昭和レトロな雰囲気が漂っている商店街が逆に新鮮だっていうんだよ。若者と高齢者が接する機会があまりない今だからこそ、そういう交流の場があるのはいいよね。バアさんが孫を連れて地蔵通り商店街を案内してあげるなんて最高じゃないですか。

 若者と高齢者が交流する場がもっと増えて、話をしたり笑い合えるような機会が増えれば、高齢者ももっと元気になるし、高齢者のことを親身に考える若者も増える。かかわりあいを持つことで脳が刺激されれば認知症の予防にもなる。

 そんな社会になることで、案外日本の高齢化問題なんて結構解決しちゃうんじゃないかな。いつも笑顔でチャーミングに! お互いに、楽しく長生きしましょうよ!

(山下 隆)

「朝日脳活マガジン ハレやか」(2021年 12月号)より抜粋

どくまむし・さんだゆう/1936(昭和11)年生まれ。中学時代に舞台「鐘の鳴る丘」でデビュー。その後「ウルトラマン」のアラシ隊員、「ウルトラセブン」ではフルハシ隊員として、一躍人気者に。「毒蝮三太夫のミュージックプレゼント」(TBSラジオ)は1969(昭和44)年のスタートから50年を超え、現在も放送中。1999(平成11)年に聖徳大学の客員教授に就任し、介護や福祉の講義を受け持つ。映画『老後の資金がありません!』(10月30日(土)全国公開)には、主人公・篤子(天海祐希)の友人、サツキ(柴田理恵)の父親・大泉健三役で出演している。

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