「昨年はイベント関係や観光など、コロナによって真っ先に打撃を受けた人たちが中心でした。しかし今年になって、普通の会社員が圧倒的に増えました。会社の業績が悪化し残業もできなくなり収入が減り、住宅ローンが払えなくなるのが理由です」
任意売却の最大のメリットは、競売より高く売れる点だ。両者には雲泥の差があり、飛田さんによれば任意売却の方が500万円から1千万円近く高値で売却できることがあるという。
自宅を手放す人が続出する現状に対し、民間による支援の動きも始まっている。
■来年倒産増える恐れ
昨年12月、全国銀行協会などが策定したガイドラインに基づく、「コロナ版ローン減免制度」がスタートした。東日本大震災後に整備された減免制度が原型で、ローンを返済できなくなった人が金融機関の同意を得た上で弁護士の支援を受け、簡易裁判所に特定調停を申し立てて債務が減免される。弁護士などの支援も無償で受けられるなど、メリットは多い。
制度に詳しい松浦絢子(あやこ)弁護士は、制度の最大のメリットは信用情報に問題があるブラックリストに掲載されない点だと話す。
「自己破産すると、信用情報機関にその旨の情報が登録されブラックリスト入りし、数年間は新たにローンを組んだり、クレジットカードをつくるのに支障をきたします。しかし、この制度はその心配はありません」
一方、制度には課題も多いという。
例えば複数の金融機関から借りている場合、1社でも拒否すれば制度が使えないなど利用のハードルは高いと指摘する。
「制度の認知度も低く、救済されるべき人に情報が届いていません。政府系金融機関のコロナ融資の期限が年末で切れますが、来年以降、会社が倒産してローンを払えなくなる人が増えると考えられます。国は制度のPRなど、本腰を入れて取り組むべきです」(松浦弁護士)
(編集部・野村昌二)
※AERA 2021年11月1日号