長引くコロナ禍で、住宅ローンの返済に行き詰まる会社員が増えている。民間による支援の動きも始まった。解決策はあるのか。AERA 2021年11月1日号から。
【図】新型コロナの影響による住宅ローン返済の相談件数はこちら
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「住宅ローンのことを考えると、夜も眠れません」
建材メーカーで働く男性(40代)は、言葉少なに語る。
5年前、子どもが小学校に入学したのに合わせ、埼玉県内に約4千万円でマンションを買った。35年ローンで、支払いは月9万円と年2回のボーナス払いが10万円ずつ。給与は手取りで月35万円程度。妻(40代)も近所のスーパーでパートとして働いていたので、難なく返せていた。
■競売より任意売却
だが、コロナ禍で男性の会社の業績が悪化。収入は半減し、昨年冬のボーナスも全額カットされた。妻もコロナを理由にパートを解雇された。家計は一気に赤字になり、住宅ローンの支払いが苦しい状態が続く。男性は、金融機関にローンの返済条件の見直しの相談をしている。
「真面目に働いてきたのに」
昨年から続くコロナ禍で、失業や収入減により住宅ローンの返済に窮する人が増えている。
住宅ローンを扱う独立行政法人「住宅金融支援機構」によれば、全国のコールセンターに寄せられたコロナ禍に起因する住宅ローンの条件変更の相談は、昨年2月から今年9月までの間に累計6240件。最近は昨年より減ったものの、高止まりの状態が続く。
住宅ローンが滞納した状態が続くと、家を差し押さえられ、「競売」にかけられる。競売は、裁判所主導で市場価格よりかなり低い価格で売却される。
そうした人たちの「駆け込み寺」が、任意売却だ。住宅ローンが支払えなくなった債務者と債権者(金融機関)の間に不動産会社が仲介に入り、双方が納得する形で売却する。
任意売却を専門に行う不動産会社「明誠商事」(東京都)の飛田芳幸社長によれば、現在、月35件近い相談があり、40代、50代が中心。これらは昨年とあまり変わらないが、今年に入って客層の変化を感じると話す。