高市早苗政調会長と甘利幹事長(C)朝日新聞社
高市早苗政調会長と甘利幹事長(C)朝日新聞社

 安倍晋三元首相も同じように大阪の中心地で何度もマイクを握った。その時の熱気と比較すると、明らかに岸田首相は低調だった。自民党幹部はこう話す。

◆次の幹事長に河野太郎氏、高市早苗氏の名前

「正直、連立与党で過半数という勝敗ラインは低すぎる。小選挙区での大物落選も続き、特に甘利幹事長の敗北で岸田首相は当然、任命責任を問われる。政局になるだろう」

 今回の前兆は衆院選の最中に行われた、10月24日の参院静岡県選挙区補選だった。自民党が支援した元市長が立憲民主党の新人候補に5万票近い差をつけられ、敗れた。選挙中、岸田氏は2度も応援に入っていたにもかかわらずだ。

 参院山口県選挙区と合わせて、自民党が2連勝という呼び声が高かっただけに、まさに「静岡ショック」だった。

 そして衆院選では甘利幹事長の不在が目立った。自分の選挙区である神奈川13区の情勢が厳しいと、応援演説をキャンセルして、地元に張り付いた。それでも小選挙区で負けてしまった。

「岸田首相が異例の静岡に2度も応援というのは、勝てると自民党本部が判断したからですよ。その責任者は幹事長の甘利氏です。静岡で負けると、今度は甘利氏本人の選挙がやばくなってしまった。全国の遊説をキャンセルして幹事長が地元に張り付いた。幹事長たるもの、小選挙区は圧勝でなければならないというのが、不文律です。自民党本部で選挙の責任者として指揮に当たらなければいけないからです」(自民党の閣僚経験者)。

 すでに自民党内部から「甘利氏は責任をとるべきだ」「岸田首相は甘利氏を選んで失敗したのだから、身を引くべき」と厳しい声もでている。

河野太郎広報本部長(C)朝日新聞社
河野太郎広報本部長(C)朝日新聞社

 自民党で20年以上、政務調査会の調査役を務めた政治評論家の田村重信さんはこう言う。

「衆院選がすぐあることをわかっていながら、総裁選で世話になったと、甘利氏を幹事長に選んだのが岸田首相の最大の失敗。自民党の長い歴史の中で幹事長の小選挙区での敗北は初めてです。甘利幹事長の任命責任を問い、すでに岸田下ろしと言う自民党幹部もいます。甘利氏が責任を取らなければ、事態が収まらないと思う。岸田首相が甘利氏に引導を渡して人気高い河野氏や高市早苗政調会長らを後任にできるか、否かが、ポイントになる。できなければ、来年の参院選へ向けて岸田下ろしの狼煙があがる」

(AERAdot.編集部 今西憲之)