衆院選の投開票が10月31日、行われた。岸田文雄首相が設定した「政権与党で過半数」の勝敗ラインをクリアー。11月1日午前5時の時点で自民党は261議席を獲得し、過半数である233議席を単独で大幅に上回り、「絶対安定多数」の261議席を確保した。
しかし、自民党幹部は沈痛な面持ちだった。
「甘利明幹事長 若宮健嗣万博相、石原伸晃、宏高兄弟、平井卓也前デジタル担当相、後藤田正純氏、野田毅、桜田義孝元五輪相ら大物が小選挙区での敗北が確実になった。石原伸晃氏と野田氏は比例復活もできなかった。甘利幹事長は岸田首相に辞意を伝えたが、これから岸田政権は厳しい運営を強いられる」
9月の自民党総裁選は、衆院の任期満了が目前に迫り「選挙の顔」を選ぶ側面が強かった。
人気が高い河野太郎広報本部長(麻生派)が優位とされたが、甘利幹事長(麻生派)が岸田支持で派閥をまとめるなどし、岸田首相の誕生となった。しかし、自民党から小選挙区で落選した前職の候補者はこう打ち明ける。
「当初はご祝儀相場で自民党に勢いがあったが、終盤になると、自民党の支持が下がり始めた。街頭に立っても反応がほとんどなく、そっぽを向かれるという感じです。前回の衆院選とはまったく違った反応でした。岸田首相には失敗、失言もないのに、どうしてなのか理由がわからず、最後まで何をしていいのか、と苦悩するばかりでした。岸田首相の人柄はとてもいいが、選挙に向かない。人が集まりませんからね。正直、河野さんが首相ならと候補者同士で愚痴ることもあった」
衆院選の期間中、岸田首相は全国を駆け回った。10月24日には大阪の天王寺駅前で演説し、歩道橋にはあふれんばかりの人並だった。予定時刻より30分ほど遅れて到着した岸田首相が演説をはじめるとその場を離れる有権者が続出した。
記者が話を聞いてみると、「面白くない岸田さん」、「寒い中、難しいことを言うので、退屈だ」、「コロナで沈んでいるのだから、景気のいい演説を聞きたかった。安倍さんの方がよかった」などと言っていた。