「官僚が最も恐れる政治家」だというのだ。その理由は、細かいことにこだわり怒りっぽい性格にあるという。かつてつかえたある省庁幹部はこう明かす。
「政策通で優秀な方ですが、ちょっとしたことですぐ不機嫌になる。怒鳴られたり、無視されたりした人はたくさんいます。怒られないように、ほかの政治家より気を使わざるを得ないんです」
経産省や内閣府、外務省などの歴代の担当者は、大臣の機嫌を損ねないようどのように接するべきか蓄積してきた。
海外出張などの際、食べ物の好みから喫煙場所の確保、身の回りのサポートに至るまで様々な項目にわたって「通常の接遇対応に加えて留意すべき点」をまとめているのだ。
本誌が入手した内部資料を見ると、茂木氏がマニュアルを作るよう指示したのかどうかはわからないが、歴代の担当者の涙ぐましい努力が見て取れる。
例えば食事。麺類が好きだとしつつ、例外的に嫌いだとされる冷やし中華や長崎ちゃんぽんまで把握している。伸びたり硬くなったりしないよう、注文時間の調整も抜かりない。パンは好きだが硬いフランスパンは苦手。メロンは嫌いだとされるが、なぜか夕張メロンはOKのようだ。
こうした好みの把握は一朝一夕ではできない。食事する度に、残しているものはないか常にチェック。それをメモして引き継いでいくエリート官僚の姿を想像すると、どこか滑稽にも思えてくる。
外交には万全の体調で臨んでもらわないといけない。「メガシャキ」など栄養ドリンクを日本から持参しつつ、車内エアコンの設定温度は25~27度に徹底する。
ヘビースモーカーの茂木氏がいらつくことがないように、「何よりもまずタバコ」。あらゆるところで吸えるよう調整し、喫煙可能場所のリストを作成する。T字カミソリの携行からホテルのマッサージ手配まで、随行する担当者や現地の大使館員らは大忙しだ。こうした特別対応をするためには、人員や費用もかさむ。