
現在読書専門カフェなど、読書体験を豊かにするためのサービスが多く展開されている。読書という趣味を通した出会いをサポートするオンライン書店もあるという。AERA 2022年11月14日号の記事を紹介する。
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文庫本の選書とマッチングサービスを組み合わせたオンライン書店「Chapters bookstore」は昨年6月にオープンした。毎月のテーマに沿って4冊の文庫本が用意され、題名は隠されたまま、推薦文やイラストから1冊を選ぶ。家に届くまで題名はわからない。読み終えたら、同じ本を読んだ人と20分のビデオチャットをすることができる。月額1980円のサービスだ。
「20代後半の頃、マッチングサービスで恋人を作ろうとしたけど全然出会えず、出会い方にフォーカスしたワクワクするサービスがあったらいいなと思っていました。それを趣味の読書と融合させて作ったんです」
と代表の森本萌乃さん(32)は話す。もともと電通に勤めていたが、対企業より消費者に向けた仕事がしたくて、コスメ、アパレルの会社を経て自分のビジネスを立ち上げた。昨年、取次のトーハンから出資を受け、今年は特許を取得した。
「オープンまでは寝不足で目がバキバキになるくらい働きました。まだ生きていけるだけの利益は出ていませんが、お客様の満足度が高いのがうれしい」
■選書に命かける
登録者はのべ約4千人。ほとんどが20代、30代で全体の6割を女性が占める。ビデオチャットで気が合えば連絡先を交換し、ひと月に3組くらいのカップルが誕生している。その一方、4割の人はビデオチャットには参加せず、選書サービスだけを利用する。つまり、本選びに迷う人たちの読書の案内役になっているのだ。
だから森本さんは「命がけ」と言うほど選書に力を入れる。書店員、ユーチューバー、出版社と相談し、エンタメ小説を中心に毎月20~30冊の候補作を読み、4冊に絞っていく。
「チャプターズのブックカバーが面白い本の証明になるといいなと思ってるんですよね。読んで損した、つまらなかったと思われたらもったいないから妥協できないんです」