SNSには「毎度選書センスに脱帽。届くまで待つ時間も良い」「しっかり泣いた本は久しぶり」「共通の趣味があると話が弾む」などの感想が(photo Chapters bookstore提供)

 出版社から挙がってきた候補作が面白くないときはリストを出し直してもらう。

「私の信条は仕事しやすい人にならないこと。ちゃんとこだわらないと見たことのないものは作れない。面倒な人でいたい」

 昨年、「秋のお出かけ」をテーマに一緒に選書をした新潮社文庫出版部の菊池亮さんは、森本さんの選書にかける真っすぐな思いを感じたという。

「とにかく顧客のことだけを考えている。1タイトル約400~500冊と販売数が思ったより多かったのも印象的でした」

 結局、約3千タイトルの新潮文庫から原田マハ『楽園のカンヴァス』、角田光代『さがしもの』、佐藤多佳子『しゃべれどもしゃべれども』、宮沢賢治『銀河鉄道の夜』が選ばれた。

 出版社によっては品切れの作品を重版することもある。11月のテーマはコーヒーブレイク。特製ブックカバーとコーヒーのドリップパックが付いてくる。

「楽しい読書体験を届けたい。本の1ページ目を安心して開いてもらうにはどうしたらいいのか、いつも考えています」

 小田急電鉄の特急ロマンスカーでは、車内で書籍の要約サービス「flier(フライヤー)」のコンテンツの一部を読むことができる。

 flierはビジネス書を中心とした本の要約を1日1件ずつ配信するサービスだ。ユーザーは30代、40代が多く、無料会員を含めた累計会員数は98万人。コロナで在宅勤務が増えたときに大きく伸びた。

 要約は出版社と著者の許諾を得ている。出版社の中には本のPRとして協力し、手応えを感じている会社もある。普段人気があるのは、すぐ役立つビジネススキルの本の要約だが、コロナ以降は『人は話し方が9割』のようなコミュニケーション関連本の要約を読む人が急増した。フライヤーの執行役員・井手琢人さんは言う。

「どんな要約が読まれているかでビジネスパーソンの悩みがわかります。最近はリベラルアーツへの関心が高まっている。ビジネス書の情報はこのサイトにいちばん集まっているという状況を作りたいと考えています」

(ライター・仲宇佐ゆり)

AERA 2022年11月14日号より抜粋

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