SKY-HIさん(撮影:写真部 張溢文)
SKY-HIさん(撮影:写真部 張溢文)

 2005年、18歳でAAAのメンバーとしてデビューした彼は、その直後から“SKY-HI”を名乗り、都内のヒップホップ系クラブで活動をはじめた。フリースタイル(即興)・ラップで腕を磨き、ラッパーやビートメイカーとの交流を深めるなど、自力でヒップホップ・アーティストとしての土台を作り上げた彼だが、シーンでの知名度が上がるにつれて、周囲からのイメージや偏見に苦しむことに。

 ヒップホップの現場では「なんでアイドルがラップを?」と冷ややかな目を向けられ、昼間の仕事では、夜な夜なクラブで活動することにいい顔をされない。才能と努力だけではなかなか突破できない壁は、彼自身に大きなストレスと痛みを与えた。

「“アイドルではなくラッパーとして活動したい”ではなく、どこかに帰属させられること、ジャンル分けされること自体がイヤだったし、耐えられなかったですね。自分が求めていたのは、信頼できる人と“ここなら成長できる”という場所。残念ながらどちらも得られたとは言えませんでした。自分が活動を続けられたのは、たまたま運と根性と体力があったから」

「THE FIRST」を立ち上げた理由のなかには、“過去の自分を救いたい”という切実な思いも含まれているようだ。

「アーティストとして成功するだけでは報われないし、この状況のままだと、今後もかつての自分と同じように苦しむ人を見ることになる。自分が受けた傷やトラウマを解消する唯一の方法は、過去の自分を救ってあげること。そのために、オーディションに参加してくれた人たちに才能を伸ばせる場所を提供することが必要だった気もします。そういう意味では利己的なプロジェクトなのかもしれないですね」

■BTS、BLACKPINKを生んだ韓国との差

 SKY-HIが掲げるもう一つの問題点は、旧態依然とした日本のエンターテインメントの在り方だ。ストリーミング(定額聴き放題の音楽配信サービス)や配信ライブの活用も立ち遅れ、大手の事務所も、インターネット以降の音楽マーケットに対応できているとは言い難い。BTS、BLACKPINKなど世界的な人気を得ているアーティストが続々と登場している韓国と比べても、日本のエンタメの衰退ぶりは明らかだ。

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