4人のバンドメンバー全員が、がんに罹患。リーダーの加瀬邦彦(享年74)を6年前に亡くした今も、平均年齢73歳のがんサバイバーバンドは変わらない歌と演奏を続け、ついに結成55周年を迎えた。それぞれのがん体験と、元気の秘密を語ってもらった。
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植田芳暁(よしあき):1994年にリーダーの加瀬邦彦がメンバーで最初にがんになった。食道がんでした。人生を楽しんでいた人だったので、この人も生身の人間だったのかとショックを受けました。
島英二:寝ないでも遊ぶような人だったので、大丈夫だと思っていた。「一緒に闘っていきましょう」と言いましたが、内心では驚いていました。
鳥塚しげき:僕らの人生に初めて暗いものが押し寄せた経験だったかもしれません。まったく心構えができていませんでしたから。
植田:幸い、小さいうちに発見したので手術して復活できた。でも、今度はトリさんが……。
鳥塚:そう、2002年にね。胃の調子が悪くて、加瀬さんが手術をした病院で検査したら「がんがある」と。それこそ「ガ~ン」ときた(笑)。うろたえるほどショックでした。バンドに穴をあけることも心配だったし、つい悪いほうに考えてしまう日々。加瀬さんが「すぐ入院しろ」って言ってくれて、やっと手術の決断ができたくらい。
植田:トリさんもがんになって僕は認識を変えたね。いくら楽しい日々を送っていても、なるときはなるんだって。誰にでも起こりうる。他人事じゃないと思うようになって、大嫌いだった検査を僕も受けるようになった。
鳥塚:僕は退院してからは毎年胃カメラ、1年おきに大腸内視鏡検査をしている。
植田:検査は大事だね。僕の大腸がんも半日ドックを受けて見つかった。07年だった。早期発見できたので、まだがんも小さくて。加瀬さんのときは大手術だったけど、僕は腹腔鏡手術で切除することになった。ただ、最初の医師が自信なさそうなことを言うので、複数の病院にセカンドオピニオンを取りに行って、「絶対大丈夫です」と言ってくれる医者と出会えたのがよかった。この先生なら大丈夫だと安心して手術を受けられたから。術後に腹直筋の痙攣(けいれん)があって本当に大変だったけど、信頼できる医者と出会うことって大事なんだなと痛感しましたね。