悩みとは、私が息子に対して、「こういうところを改善してほしい」と思っている点、つまりよくないと思っている部分を指すわけです。
もちろん、悩みがないわけではないので相談をしたいのだけれど、そんなことを息子の目の前で発言するのはためらわれ、小さな声で、「そういうことは子どもがいないときに話したい」と伝え、「次回の検査のときは、子どもを連れてこなくてもよいか」と尋ねました。
すると役所の人は、明らかに不信感を抱いた声で、私にこう言ったのです。
「子どもの様子をこちらに見せることに、何か不都合なことでもあるんですか」
私が意図した、「息子の前で悪口のようなことを話したくない」という気持ちとはまったく別の、なにやら隠したいことでもあるような方向に受け取られましたが……親として、そういう気持ちを持つことは、そんなにおかしなことでしょうか。
ここの役所では、どの親もみんな、子どもの目の前で悩みを相談しているのでしょうか。
ひどく疑問に思いましたし、もし実際にそうだとしたら、子どもの尊厳をないがしろにしすぎです。
■「あなたならできる」という言葉をたくさん使おう
しかもこうしたことが、役所だけでなく、病院の検査でも結構あるのです。
「親が子どもの悩みを相談している間は、一時的に子どもが遊べる(あるいは預けられる)場所を作る」などの対応策を考えてもらえたら、と願うばかりです。
周囲の話を聞いていると、世の中には、子どもに対して、「自分の子だし、まあこんなものだろう」と思っている人が多い気がします。
伸び悩んでいる子の親から、「期待していいものなのか、わからない」と、相談されたこともあります。
でも、子どもの前で、その子に対しての評価を話すときは、可能なかぎり良い点だけにとどめておきたいものです。
悪い点ばかり指摘していると、本当にそのとおりの子どもに育ってしまいます。
できたら、「あなたならできる」という言葉を、当たり前だと思えるくらい、たくさん使いましょう。
それに、「絶対に伸びる」「いいところが多い」と期待しながら育てたほうが、親にとっても子どもにとっても、将来的な楽しみが増えるのではないでしょうか。