トップアスリートの親の中には、自分を立派だと思う人や、「子どもの成績」イコール「親の価値」だと勘違いする人も少なからずいます。親のそうした態度を見た子どもは、「自分もそうしていい」と思ってしまいます。

――子どもの習い事を選ぶスタンスや続ける基準はどう考えていますか。

 私は運動がすごく好きで得意だったんですけど、音楽系は全然だめで、例えばバイオリンやピアノなんかは(自分が教えられないので)子どもにいい環境を与えられないんですよね。すると、環境を与えられる人たちと競っても極めるところまでは難しい。それに、先生の指導方針が自分の子育て方針と違う場合は、そこでやめます。例えば人と比べたり、人間性を攻撃したりするような先生のもとでは、人間性を育むのは難しいですから。

池江選手(右から2人目)は東京五輪女子400メートルメドレーリレーで8位入賞を果たし、仲間と抱き合って喜んだ(c)朝日新聞社
池江選手(右から2人目)は東京五輪女子400メートルメドレーリレーで8位入賞を果たし、仲間と抱き合って喜んだ(c)朝日新聞社

――璃花子さんは今年4月の日本選手権で4冠に輝き、東京五輪代表に決まりました。その強さは、「自分を信じる力」だと思い至ったそうですね。

 自分を信じることの大切さは、わが子や幼児教室の子どもたちに繰り返し伝えてきたことです。自分を信じる心を育てるには、まずは親が子どもの可能性を信じること。私はよく「あなたならできる」「あなたにはまだまだ眠っている力があるよ」と語りかけてきました。子どもはこうした「暗示」によって性格形成されるといっても過言ではありません。素晴らしいと言われれば「自分は素晴らしいんだ」と思うし、「あなたには価値がない」と言われたらそう思い込んでしまう。

「無限の力がある」と言い続けるうちに、璃花子は私がびっくりするような記録を出すようになりました。親が天井を作らずに、「もっと上に行ける」と励まし続けると、子どもは親も予想がつかないほどの成長を見せてくれます。

――本番での強さも、小さいころからのトレーニングの成果なのですか。

 璃花子は0歳から12歳まで私の教室に通っていました。レッスンでは一人ひとり発表する時間を設けています。幼いころからみんなに注目される中で、力を発揮する方法を体得した璃花子は、本番では練習で培った力を出せるようになりました。

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