■生身の嵐浮かび上がる
堤:それは嵐5人の「人間味」です。スーパーテクニカルな撮影と編集の中から、生身のものが浮かび上がってくるイメージ。「そこに生きている嵐がいる」というライブ感を、目の前で感じてもらいたかった。そのためにどうすればいいかスタッフと打ち合わせを重ねて、逆説的だけど、楽屋裏のバックステージみたいな姿やMCは入れずに、ステージの上で歌ったり踊ったりしている映像だけを使うことにしたんです。ステージ上だけど、彼らによそよそしさはなくて、すごく自然体でいる。ふとした瞬間、誰かと誰かの肩が触れた、手と手を握り合った、アイコンタクトをした……そんな動きを見ていると、「ああ、嵐っていいなぁ」という感情が自然に湧いてくる。編集方針としては大胆でしたが、結果として大正解だったと思います。
櫻井:できあがったものを見て僕が感じたのは、「愛されてるなぁ」ということでした。それは1人が4人に愛されてるということだし、5人がファンの人たちに愛されてる。そして、監督の僕らに向ける愛が詰まってる。ライブ映像だから興奮したりアドレナリンが出たりもするんだけど、何かとてつもなく温かい、そんな作品になったと思っています。
――新型コロナウイルスで世界が一変する前の映像でもある。このクオリティーでライブ映画を残せたということは、奇跡でもあった。
堤:我々の日常だった風景がここにはあります。でもその日常をまた取り戻していく努力、闘いをしていかないといけない。この映像を見るたびにね、ちょっとした切なさと、拳に力が入る感じがあるんですよ。
櫻井:一日も早くそんな日を取り戻せるように、願いを込めてご覧いただけたら。この映画を見れば、ライブ会場に行くまでのワクワク感や、終わった後の余韻までよみがえると思う。僕たちとの「あの時」を思い出して楽しんでいただきたいですね。
(構成・ライター/大道絵里子)
※AERA 2021年11月8日号