写真を手にする松永拓也さん。「2人の命を無駄にせず、二度と交通事故が起きない社会を作りたい」と「あいの会」に参加し、交通事故撲滅活動を続けている(写真/横関一浩)
写真を手にする松永拓也さん。「2人の命を無駄にせず、二度と交通事故が起きない社会を作りたい」と「あいの会」に参加し、交通事故撲滅活動を続けている(写真/横関一浩)

 僕が一番望むのは交通事故を一つでもなくすこと。そうすることが亡くなった妻と子どもの命を無駄にしなかったと言える気がするからです。顔と名前を出して会見を行い、今も交通事件の被害者遺族らでつくる「あいの会」で活動を続けるのはそのためです。

 人間は感情を持った生き物ですから、怒りを持って感情を表に出すのは当然だと思いますし、その感情を否定するものでもありません。ただ、個人に対する過度な中傷は、本質的に何が大事なのかをわからなくしている気がします。誹謗中傷による個人攻撃だけに終わり、健全な議論ができなくなってしまったと感じるからです。

 例えば今回、司法の場で受刑者のブレーキとアクセルの「踏み間違い」が認定されました。だとしたら、踏み間違いが起きないためにはどうすればいいのか、踏み間違えない技術があるのならそこに公費を投じてもいいのではないか──。こうした議論が社会全体で起きてほしいのです。

 いま年間30万件以上の交通事故が起こり、年間3千人近い方が亡くなっています。誰もがその被害者にも遺族にも、そして加害者にもなり得るのが交通事故です。その現実を知ってもらった上で、交通事故を社会問題として考えていってほしいと思います。

(編集部・野村昌二)

AERA 2021年11月8日号

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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