(c)2022「あちらにいる鬼」製作委員会
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 でも、みはるは決してわかりやすいわけではないし、彼女ならできるという確信があったわけでもありません。むしろ、「できなさそうだからやってみようかな」という感じかな。わからないからやってみよう、という感じで決めました。

──出演が決まった時点で、原作者の荒野と、モデルの寂聴に手紙を書いた。

寺島:みはるを演じることになりましたとご報告しつつ、「これだけはやっておいて」ということがあったら教えてください、と手紙に書いたんです。すると、荒野さんは、「みはるは寂聴さんをモデルに書いてますが、あくまでもみはるなので。しのぶさんのやるみはるをやっていただければ最高です」というお返事をくださった。それで気持ちがすごく楽になりました。

 寂聴さんとは撮影前にお会いする予定もあったのですが、彼女が体調を崩されてお会いできませんでした。会えなかったということに、何か意味があるんだなあと自分に言い聞かせて演じました。

■この人と死んでもいい

──篤郎役の豊川とはこれまで何度も共演してきた。息もぴったりな二人だが、意外にも演技について一緒に話し合ったことは「一切ない」と言う。もちろん、今回も例外ではなかった。

寺島:今回は待機場に一緒にいることが多かったので、豊川さんは近くにいましたけど、別に何を話すこともなく、近くで座っているだけ(笑)。でも、「やわらかい生活」の時のほうがさらに喋らなかったな。仕事以外の話も全くしません。当時、離れたところに座っていた記憶があります。それなのに、撮影に入った時は、すでに何かが出来上がっていました。現場でお互いがその役になって演じると面白いものが生まれるんです。心地いいというか、私が彼を「祥ちゃん(祥一)」として信じられるように役を作ってくださっていました。

「愛の流刑地」では「もうこの人と死んでもいい」って思わせてくださった。究極の愛ですよね。豊川さんとでなければ成り立たなかっただろうなと思います。

 廣木監督は、豊川さんと私についてはもう野放し状態です。「何かやってください」という感じで、NGもないんですよ。

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