林:ファンの中の一人、という感じなんですね。
加賀:そう。「あの子は僕のことをふつうに扱う。それがいい」と言ってたって岸惠子さんから聞きました。べつに意図してないんだけど、それがよかったんですね。
林:加賀さんって、どんなにお金がある人も、どんな有名人も、「男その一」って感じで扱ってらしたみたいですね。なかにし礼さんが「あのころ六本木とかあのへんで遊んでた男は、加賀まりこに受け入れられるか嫌われるか、それで男の価値が決まったんだ」とおっしゃってました。
加賀:アハハハ、大仰なことを言ってる。
林:私、加賀さんの男の人の好みってわかんない。見た目もそんなに関係ないんでしょう?
加賀:見た目で評価っていうのは、一つもない。心意気よね。
林:心意気か……。女優さんで仲のいい方いらっしゃるんですか。
加賀:いますけど、みんな“おじさん”的な人です。天海祐希とか(笑)。内田有紀、石川さゆり、浅丘ルリ子……。みんな“おじさん”ですね。
林:天海さんと仲いいって、すごくわかります。
加賀:そうでしょ。あの子も東京の下町だし。上野の子なの。
林:加賀さん、今後のご予定があったら教えていただけませんか。
加賀:ないです、いまのところ。オファーはありますけど、台本を読んだだけで想像がつく作品ってあるでしょ。想像してあんまり楽しい作品になりそうにないな、と思うとちょっとね。働けばいいってもんでもないんでね、この年になると。
林:意気に感じるような作品があったら?
加賀:そうね。身を粉にしてもいいような作品があったらね。
林:舞台はいかがですか。
加賀:自分の矜持として、舞台で自分の納得がいく歩きがきちっとできないんだったらやらない。
林:加賀さんと同じような年ごろで、第一線にいらした女優さんたちが、ホームドラマでふつうのおばあさんの役をやられたりしますけど、私、この方のキャリアだったら、ドラマでふつうのおばあさんの役をやらなくてもいいのに、と思うんです。