その理由として考えられるのが「地震」を扱うことの難しさである。原作がベストセラーになった1970年代は、関東大震災から約半世紀が経過していて、地震によって日本が沈没するという話はやや荒唐無稽に思われた。むしろ、オイルショックのほうが世間に現実的な不安を呼び起こしていたものだ。

 しかし、そのあとの約半世紀で日本は阪神大震災と東日本大震災を経験した。特に後者の大津波は沈没のイメージに重なるところもある。正直、地震が出てくるドラマはあまり見たくないという人もいるのだろう。NHK朝ドラ「おかえりモネ」が低視聴率に終わったのも、東日本大震災によるトラウマを深刻に描き過ぎたことが一因とされる。

 今回の「日本沈没」もいつもの日曜劇場に比べ、喜劇性が乏しいところが引っかかる。香川照之の怪演にしても、いつになく笑えるものではない。面白くするためにはあざといほど徹底するこの枠をもってしても、限界はあるということだろうか。

 おそらく、ここからさらに数字を伸ばすには、サブタイトルにある「希望」をどう見せるかが重要になる。たとえば、草なぎ剛や柴咲コウが出演した2006年公開の映画では思い切った変更が行われた。新型爆弾を海底で爆発させ、完全な沈没を回避するという結末にしたのである。

 はたして、逆転ドラマやサクセスストーリーが得意な日曜劇場は、どんな希望を用意しているのか。お手並み拝見といきたい。

宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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