2006年には草なぎ剛、柴咲コウなどのキャストで映画化された。写真は樋口真嗣監督
2006年には草なぎ剛、柴咲コウなどのキャストで映画化された。写真は樋口真嗣監督

 たとえば、第3回において、主人公は友人でもある経済産業省の官僚にこう言う。

「人命よりも経済を優先するのか?」

 これはまさに、コロナ禍の日本を揺り動かしてきたテーマだ。思えば、前作「TOKYO MER ~走る緊急救命室~」でも、人命をいかに救うかが描かれた。女性の都知事を登場させ、主人公の医師たちが出動時の「死者ゼロ」を目指して奮闘する。水戸黄門プラス大河に同時代性、そこが「日曜劇場」の強みといえる。

 ただ、そこに徹するあまり、ともすれば軽視されるものも出てくる。今回の「日本沈没」においては、科学的な説明などがやや置き去りにされている感もあるのだ。

 が、それもひとつの正解なのだろう。じつは筆者が最初の「日本沈没」の映像化である1973年公開の映画を見たのは小学校高学年のとき。学校で上映されたのだが、原作に忠実な科学的な説明シーンは難しすぎてよくわからなかった。

 そのかわり、主人公の藤岡弘、とヒロインのいしだあゆみが海辺で繰り広げるラブシーンでは、会場がざわつき、その映像がいまだに脳裏に焼き付いている。まぁ、エンタメとはそういうものだろう。

 今回の「日本沈没」では、恋愛の要素は薄いが、第4回のラストで主人公とヒロインが地震による地割れから逃げようとする場面には高揚感があった。たとえベタであっても、こういうわかりやすさはやはり必要だ。

 そういえば、日曜劇場で2002年に放送された「太陽の季節」では、原作にもある官能的なシーンが注目された。主人公が自らの性器で障子を突き破ってみせるシーンだ。石原慎太郎による同名小説を原作としつつも、かなり別物感のあるドラマで、しかも主人公はジャニーズアイドルの滝沢秀明。それでも、第8回「衝撃の瞬間」において、このシーンは取り入れられ、話題になった。

 とはいえ、視聴率は序盤のほうがよく、後半は伸び悩んだ。じつは今回の「日本沈没」も意外と勢いがない。15%維持は上々だが、そこから伸びる気配が感じられないのだ。

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