猗窩座との戦いで致命傷をおった煉獄は、泣き叫ぶ炭治郎を優しく呼び寄せ、語りかける。列車内で聞かされていた「ヒノカミ神楽」の情報が、自分の生家になら残っているかもしれないと告げるために……。重傷の激痛に耐える中、命が燃え尽きようとするその時に、煉獄は最後まで後輩剣士のことを思いやっていた。
無限列車における煉獄の判断は、常に「人を救うこと」を最優先になされた。だからこそ、魘夢との戦いでは後方支援に回り、猗窩座戦では身を挺して炭治郎たちを守った。
この後、激化する鬼との死闘の中で、鬼殺隊の隊士たちは、それぞれに煉獄杏寿郎の姿を思い出す。それが力となって、今後もたくさんの人たちを救い続けるのだった。
◎植朗子(うえ・あきこ)
1977年生まれ。現在、神戸大学国際文化学研究推進センター研究員。専門は伝承文学、神話学、比較民俗学。著書に『「ドイツ伝説集」のコスモロジー ―配列・エレメント・モティーフ―』、共著に『「神話」を近現代に問う』、『はじまりが見える世界の神話』がある。AERAdot.の連載をまとめた『鬼滅夜話』(扶桑社)が11月19日に発売予定。