下肢静脈瘤は足の静脈に起こる血管の病気だ。軽いものを入れると推定患者数1千万人以上という報告もある。進行すると、エコノミークラス症候群(正式には肺血栓塞栓症)になるのではないか、と思い込んでいる人が多いが、専門医によると「大きな誤解」だという。
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下肢静脈瘤は40代以降の女性に多い血管の病気で、加齢にともなって増加する。静脈は、からだのすみずみに送り込まれた血液を心臓に戻す役割をしている。このため、血管の内側に「ハの字形」の弁があり、血液の逆流を防止している。この弁が何らかの理由で壊れてうまく閉じなくなることで起こるのが下肢静脈瘤だ。横浜南共済病院院長補佐の孟真医師は言う。
「下肢静脈瘤の本当の原因は明らかではないものの、遺伝や体質、妊娠・出産、加齢、肥満、長時間の立ち仕事などが引き金になることがわかっています。特に妊娠・出産は大きな要因の一つになります」
妊娠すると女性ホルモンの分泌が多くなる。女性ホルモンには血管を広げる働きがあり、血管が広がった際、弁が弱くなり、静脈瘤が発生しやすくなるという。さらに妊娠後期は赤ちゃんが大きくなるため、腹部の静脈が圧迫される。これにより足の血液が心臓に戻りにくくなり、病気が進行するわけだ。
出産後しばらくすると一時的によくなるものの、完治することは少なく、10~15年をかけて少しずつ進んでいく。
「血管のボコボコがひどくなってきて……。かゆみがひどいし、皮膚も変色してきたんです」
横浜南共済病院心臓血管外科にやってきた女性(63歳)は、こう言い、孟医師に右足のふくらはぎを見せた。
診察をするとふくらはぎの内側の静脈が盛り上がり、蛇行している。周囲の皮膚は一部が黄色く変色していた。孟医師の指示で検査技師が血管に超音波をあてると血液が逆流していた。典型的な下肢静脈瘤だったという。
■治療の対象になるのは症状がある場合
「1人目のお子さんを妊娠したときから症状があったようですが、そのままにしていたそうです。ここ数年は血管が目立つだけでなく、さまざまな不快な症状が出てきたと言い、治療をしたいということでした」(孟医師)