下肢静脈瘤が発生するのは皮膚の下の浅いところにある表在静脈で、静脈瘤になると蛇行し、拡張した血管が浮き出て見える。
できる血管の種類や太さによって、伏在静脈にできる径4ミリ以上の「伏在型静脈瘤」、そこからつながった側枝にできる「側枝型静脈瘤」、径1~2ミリの「網目状静脈瘤」、さらに細い径1ミリ以下の「くもの巣状静脈瘤」の4種類がある。
症状が出やすく、治療の対象となるのは主に伏在型静脈瘤だ。伏在静脈には内くるぶしからふくらはぎと太ももの内側を通っている「大伏在静脈」と、外くるぶしからふくらはぎを縦に通っている「小伏在静脈」があり、約80%は前者に発生する。
他の3種類は中年以降、多くの人の足にできるが、あまり目立たず、ほとんどが無症状で治療は必要ないものが多い。
「伏在静脈で起こる下肢静脈瘤の代表的な症状としてはむくみやこむら返り、足のほてりや熱感などの違和感、湿疹によるかゆみがあります。いずれも血流の悪化が原因です」(同)
足の湿疹は血流の悪化で皮膚のバリア機能が低下することで起きる。ひどくなると皮膚が硬くなったり、潰瘍になることもある。
お茶の水血管外科クリニック院長の広川雅之医師は言う。
「静脈の血流悪化で起こる潰瘍は、動脈の場合と違い、切断に至るようなことはありません。ただし、消毒したり、軟膏を塗ってもなかなか治りません」
一方、下肢静脈瘤で起こる足のむくみやだるさは、散歩や体操で足を適度に動かすと、軽減される。
「足を動かすとふくらはぎのポンプ作用で足の血流がよくなるからです。ただ、最近はコロナ禍によるステイホームで運動不足の人が増えているのが気になります。足の症状で困っている人は早めに専門医を受診することをおすすめします」(広川医師)
■足の症状がなければ治療しなくてよい
下肢静脈瘤は良性の病気なので、皮膚炎などがなく、足の症状に困っていなければ治療をしなくてもかまわない。受診してこのことを知り、安心して帰る患者も少なくないという。