それでも歴史を繰り返さないために、映画を撮り続ける──。そう話すクレーネス監督とそのチームは「ホロコースト証言シリーズ」として被害者、加害者などさまざまな立場の人を一人ずつ取り上げ、アーカイブ映像とともに紹介する。本作はその第2弾だ。いずれも対象者がまっすぐカメラに対峙し、語りかけるスタイルで作られている。
「登場人物がカメラに向かって語ると、話す人と観ている人が目と目を合わせて、直接語りかけられているような感覚になります。もうすぐ彼らの生の声を聞くことはできなくなるでしょう。体験者である彼らの感情が、観ている人にできるだけ個人的に届くことを望んでいます」
映画を通じて社会に訴えたい思いもある。
「私たちは33年にドイツで行われた選挙がその後、どんな意味を持ったかを見てきました。あの選挙が行われたときにはもう『遅かった』。だからこそいまを生きる人々にも注意深くあってほしい。あらゆる政治の動きを注意深く観察し、可能な限り行動し、良いタイミングで立ち上がるべきです。決して『遅すぎた』ということがないように」
(フリーランス記者・中村千晶)
※週刊朝日 2021年11月26日号
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