「開示請求してから丸2年経つのに、出てきたのがこの内容です。何を隠したかったのかなと思いました」
しかも、今回の文書は雅子さんが提訴した国家賠償請求訴訟で、昨年12月にすでに国側が提出している財務省の報告書とほぼ同じだった。
■真実を知りたいの一念
何より雅子さんが失望したのは、文書に「改ざん」と一言も書かれていなかった点だ。財務省理財局長だった佐川宣寿・元国税庁長官による、公文書の改ざんの指示と、自死を結びつける具体的な記載はなかった。
「夫が苦しんだ理由は、一番は改ざんをさせられたことです。そこが抜けています」
公文書の改ざんがなければ、夫は精神を病むことも、自死することもなかったはず──。一番の根本の理由が書かれていないのは納得できない、ここまで苦しんでいた夫の自死の理由を書かないのはひどい、と雅子さんは憤る。
「『改ざん』と書いてしまうと、その指示系統まで全て出さないといけないので、隠したかったのだと思います」
国は何を守りたいのか。改ざんの事実を隠蔽した上で、公務災害を認定しようとしているのか。雅子さんはこう話す。
「私が知りたいのは、改ざんは何で起きたのか、誰の指示で起きたのかです。そのことがわからないと、私の苦しみは解放されません」
真実を知りたい──。その一念で、雅子さんは国を相手に裁判を続けている。10月下旬には、改ざんに関連する行政文書が開示されないのは不当だとして、国に不開示決定の取り消しを求める訴えを大阪地裁に起こした。雅子さんは言った。
「一歩ずつ頑張れば、きっと真実を知ることができます」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2021年11月29日号より抜粋