昨年こそ怪我の影響で振るわなかったが、夏のアイスショーで表現力に磨きをかけたベテラン田中刑事(27)。卓越したダンスセンスを持ち、GPイタリア大会では6位ながらエキシビションに招待された友野一希(23)。ジュニア時代宇野と切磋琢磨した山本草太(21)も、ワルシャワ大会で優勝したばかり。これだけの群雄割拠の状況で、羽生の一枠掌握は絶対視できないということだ。
改めて佐野氏に、羽生が全日本に出場しなくても代表選出される可能性について尋ねてみた。佐野氏は、「全日本はもちろん最重要の大会です」と強調する。「例えば、仮に今季飛躍の佐藤駿選手が『五輪に出場したい』と言ったところで、全日本を欠場したら最初から選考の対象にはなりません」
しかし、羽生の場合は、全日本へ出場するかどうかよりも、やはり「実績」が高く評価されるだろうと話す。「『五輪2連覇』という凄まじい実績を残している。彼はもはや『別』、別格なのです。選考にあたって、彼の存在を外すことはまず考えられない」(佐野氏)。
スケート連盟の竹下強化部長も言明したとおり、現時点での世界ランクから、少なくとも羽生選手が「代表選考の対象」から滑り落ちるという可能性は無い。それでも、王者羽生をめぐり、これほど周辺が騒ぐのは、今季の男子に“逸材”がそろっていることの証(あかし)でもある。雑音を一蹴するためにも、羽生選手の一日も早い復活が待たれる。
(菱守葵)
※週刊朝日オンライン限定記事