「エリアにもよりますが、原則、駅から徒歩10分以内の立地で選ぶと比較的売りやすい。駅からの近さはどの世代にも共通して求められているポイントです。郊外の戸建に住んでいたシニア層が駅近のマンションに住み替えるケースも増えています。できれば5分以内、目標は7分以内と、少しでも駅に近い方が有利です」

(3)  ファミリータイプは需要減、60平米が売れ筋

 国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計」によれば、2015年時点でいわゆるファミリー世帯である「家族と一緒に住む世帯」は約1429万世帯なのに対し、「1人暮らし世帯」は約1842万世帯、「夫婦のみ世帯」は約1072万世帯。さらに2025年の予測では、「家族と一緒に住む世帯」は約1369世帯と減る一方で、「1人暮らし世帯」は約1996世帯、「夫婦のみ世帯」は約1120世帯と増えることが予想されている。

生涯未婚率や離婚率の上昇、シニアの増加により、1人暮らし世帯が急増し、ファミリー世帯が減っているのが現状だ。

「この状況を踏まえると、これまでファミリー用マンションとして考えられていた70~80平米前後と広めのマンションは、これからは長い目で見ると需要が見込みづらい。一方で狭すぎず、広すぎない60平米前後のマンションは、都心においては需要が多いのに供給が少なく、貸しやすい面積帯です。一人暮らし世帯、夫婦のみ世帯を中心に、夫婦と子ども1人、夫婦と小さな子ども2人、シニアと幅広い層が住みやすく、価格も手頃な60平米前後が最も売れやすく、貸しやすいでしょう」(後藤さん)

(4)  中古でも2001年以降に完成

 「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」(2000年)の施行により、デベロッパーの建物に対する責任性が強まったことから、2001年以降に完成した物件は一般的に住宅の基本性能が高まっている傾向にあるという。

「2001年頃からの完成物件は、耐震や省エネルギー、遮音性などを向上させた物件が比較的多く出ています。今は新築マンションでも設備をチープにする物件が増えているため、むしろ10年ほど前に完成した物件の設備の方が優れている場合も少なくありません。中古物件を選ぶ際は、2001年以降に完成した物件であれば、価格が手頃で良質な建物であることが多い」(後藤さん)

写真はイメージです(Getty Images)
写真はイメージです(Getty Images)

 資産価値が落ちない家を選ぶためには、価格が安い物件を買おうとするのではなく、少し価格が高かったとしても購入後に価格が落ちにくいであろう物件を購入する姿勢が必要だ。

 大切なのは、今後住み替えなどの可能性があり、住まいに換金性を求める場合に、希望する額から大きく目減りすることがないかどうか。10年、20年先を想定した売却のみならず、「最終的に高齢者施設に入ることを考えたら、家を売って少しでも施設費の足しにできた方がいい」と考える人もいるという。

先行き不透明な時代だからこそ、それだけ後悔しない買い方を求める人が増えているのかもしれない。家を買うことにも、これまで以上に戦略が必要な時代だといえそうだ。(松岡かすみ)

>>【11月28日10:00公開】それでも夫婦は東京に家を買う#5

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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