地球温暖化の影響で海面が上昇。不安定だったプレートに負荷がかかる。そこで生じたひずみをシミュレーターに入れると、沈没区域を示す真っ赤な色で日本地図が染まり上がる……。日曜劇場「日本沈没-希望のひと-」のワンシーンだ。
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48年前に書かれた小松左京氏の原作「日本沈没」の根幹にあったのは、高度経済成長の終わりとプレートテクトニクスやマントル対流。一方で、現在放送されているドラマでは、作品の肝となる地震学者の田所雄介博士の設定はそのままに、物語の根っこに地球温暖化を置いている。
なぜ、テーマを大きく変えたのか。プロデューサーの東仲恵吾さんは言う。
「今の時代に即して作るなら、地球環境をどう守るかをテーマに置きたいと思ったんです。人口減少やインフラの老朽化、地球温暖化などを懸念した2050年問題は世界的な命題。設定を作るなかで、海面上昇が沈没を導引するという設定で物語を作れないかと考えました」
地震学の監修をした火山学者の山岡耕春氏は、原作への愛着を持つ読者の一人。温暖化と沈没を結びつけるという設定には「非常に困った」と吐露している。東仲さんはこう説明する。
「山岡先生とは、実際に起きている環境の変化が日本沈没という現象にどう影響するかを議論しました。地殻への大きなストレスや海面上昇が地殻変動に移行する可能性はありますか?という話からはじめて、『1万年という時を経たら起こり得る現象』といった答えを重ねていく。それをドラマというフィクションに合わせて、一週間とか一カ月という期間に集約しました。原作の設定を大幅に変えていくという点で、おそらく戸惑いがあったのだと思います」
予想外の「コロナ禍」に
ドラマの構想が始まったのは、2019年。東日本大震災から10年となる今年、一つの節目として描きたいという思いからだった。当時の状況はもちろん、政府が立てている関東大震災のシミュレーションなども目を通した。
だが、予想外のことが起きた。
「2021年は東京オリンピックが終わった翌年で、日本が経済的にも成長して上を向いている状況での放送を想定していました。視聴者の方の心にも余裕があって、改めて環境のことを考えられるようにと思っていたんです。それが、コロナ禍で大きく情勢が変わりました」