久留米駅(福岡県久留米市)に停車中の「SL鬼滅の刃」。指定席券は発売直後に完売した(撮影/河嶌太郎)
久留米駅(福岡県久留米市)に停車中の「SL鬼滅の刃」。指定席券は発売直後に完売した(撮影/河嶌太郎)

 実際、11月21日夜もアニメ2期6話のテレビ放送が始まると、ツイッターも盛り上がり、トレンドワードには「鬼滅の刃無限列車編」と「煉獄さん」が入った。煉獄杏寿郎と上弦の鬼・猗窩座(あかざ)の戦いが始まると、「煉獄さんかっこいい」「テレビでも迫力がある」とのツイートが飛び交った。28日放送予定の最終話のタイトル「心を燃やせ」が画面に出ると、「次回は絶対泣いてしまう」「もうつらい」と胸いっぱいのようだ。

 なぜ、そこまで人気なのか。AERAは11月中旬、「鬼滅の刃」についてのアンケートを実施した。その回答を見ると、年代を問わず、なぜここまで人の心をとらえたのかが見えてくる。それは、登場人物が紡いだ言葉のインパクトだ。

「私も摘まれた若い芽でした」

 そう語ったのは、近畿地方在住の30代の女性だ。

「新卒で警察官になったのですが、上司は仕事を教えてくれず、ただただ『使えない』と罵倒するだけ。それでも、人を守る使命感に燃えていて、仕事は好きでした。2年半、粘りました」

 結婚を機に退職、職場から「逃げた」。だが、子どもを産んでからも自問自答と葛藤が続いた。そんな女性が心を整理できたのは、『鬼滅の刃』の登場人物、煉獄杏寿郎のおかげだ。

脳内にエア煉獄さん

「『君が足を止めて 蹲(うずくま)っても時間の流れは止まってくれない』。じゃあ、いまは子育てを頑張ろうと思えるようになったんです」

 女性の脳内にはエア煉獄さんが住んでいて、「頑張ってて、えらいぞ」「今は休むがいい」と自分を肯定してくれるという。

 アンケートにはほかにも「胸を張って生きろ」「人は心が原動力だから」「考えても仕方がないことは考えるな」など、作中で心に刺さった言葉があふれた。「人生哲学が詰まっている」(50歳・会社員・女性)、「どん底だった頃に出会って、元気と勇気をもらった」(25歳・公務員・男性)などの声もあった。

 子どもが主人公のようにきょうだいに優しくするようになったという声も寄せられた。

 いっぽうで、鬼に感情移入する人もいる。前出の「パワハラ会議」について、「無惨様のせりふをハッキリと言えたら気持ち良いだろうなと思います。大した働きもせず、サボることを覚え、権利を主張し、仕事をしてもらおうとするとできないと言う。嫌ならさっさと辞めてくれと思います」(39歳・専門職・女性)。「鼓の鬼、響凱は私自身だと思った」(61歳・大学教授・女性)という声もあった。(ジャーナリスト・河嶌太郎、編集部・井上有紀子)

AERA 2021年12月6日号より抜粋

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